中国の市場調査
中国経済は近年、6.5%~7%で成長しており、現在の中国GDPは米国に続く世界第2位の経済大国となっている。近年は、EC(Electronic Commerce、電子商取引)関連企業やICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)関連企業が急速に成長しており、製造業では、新エネルギー、次世代情報技術、バイオ、AI、電気自動車、新素材などの戦略的新興産業における国際競争力の強化に取り組んでいる。
日系企業が中国進出を検討する際に、市場動向や製品・サービスのニーズ、参入企業の状況、流通チャネル、価格動向等の市場に関する情報の把握は不可欠である。また、業界によって、ニーズや課題は異なるため、業界動向調査・ニーズ調査をしっかり行うこと重要である。
マーケティングリサーチの方法として、インターネットで情報を収集することもできるが、インターネットだけでは得られない情報も多くあり、中国の市場を十分に理解するためには、現地企業や消費者へのヒアリングが必要な場合も多くある。
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中国の基本情報
【人口】約14億5万人(2019年)(1)(日本の約11倍)
【面積】960万平方キロメートル(日本の25倍)(2)
【GDP】99兆865億元(2019年末時点、1元=15.6円)(1)
【一人当たりのGDP】7万892元(2018年末時点)(1)
【首都】北京
【言語】中国語(公用語)
【通貨】人民元(RMB)
【民族】56民族。そのうち:漢族91.51%、少数民族8.49%(チワン族(壮族)1,692.64万人、回族1,058.61万人、満族1,038.8万人、ウイグル族1,006.93万人、その他)(2010年)(1)
【宗教】仏教、道教、イスラム教、キリスト教など
【地域】東アジア
【隣国】ロシア、モンゴル、パキスタン、インド、ベトナム等の14か国と接している。韓国、日本、フィリピン等の8か国と海を挟んで接している。
【主な気候】国土が広いため、気候は多種多様である。北から南に寒帯、温帯、亜熱帯、熱帯などにわかれる。南北の気温差が大きい。
出典:(1)中国国家統計局
(2)JETRO
中国の経済と人口
中国の経済は、1978年に改革開放(中国政府が計画した対外開放政策)を実施して以来、海外資本を積極的に導入することで高成長を遂げてきた。1992年、再び改革開放を推し進めており、経済成長は一気に加速し、現在のGDPは米国に続く世界第2位の経済大国となっている。
国際通貨基金(IMF)のデータによると、2018年における中国の名目GDPは約13兆4,074億USドルであり、アジア太平洋地域の第1位(2位は日本4兆9,719億USドル、3位はインド2兆7,167億USドル)の経済規模である。中国経済は堅調に成長し続けており、近年、鈍化はしているもののGDP成長率は毎年6.5~7%で推移している。また、1人当たり名目GDPも増加傾向を示しており、2018年は1万ドルに迫っている(アジアで10位、9位はマレーシア)。
これまでは、「投資」が中国の経済成長を支えていたが、近年は「消費」が経済成長の柱となっており、EC関連企業やICT関連企業が急成長を遂げている。
中国の人口は、2019年年末時点で、14億5万人(日本の約11倍)に達し、都市部人口は8億4,843万人で全国都市化率は60.6%(北京、上海、広州、深圳等の一級都市は85%以上)となっている。高齢者人口(65歳以上)は16.8%に達し、少子高齢化も進展している。
中国は多民族国家であり、2010年国勢調査の結果によると、民族構成は、漢族が91.5%、その他の55少数民族が8.5%である。少数民族の中では、チワン族(壮族)は一番多い少数民族であり、2010年の国勢調査によると1,693万人である。また、宗教は、仏教、道教、イスラム教、キリスト教など多様である。
出典:中国国家統計局、国際通貨基金
中国の産業
産業別GDPの傾向としては、1980年頃は、第一次産業の比率が30%、第二次産業の比率が48%、第三次産業の比率が22%であったが、第三次産業の比率が増加、第二次産業と第一次産業の比率が減少し、2019年では、第一次産業の比率が7%、第二次産業の比率が39%、第三次産業の比率が54%となっている(中国国家統計局)。
1978年の改革開放を実施して以降、華僑や先進国の資本を積極的に導入し、豊富で安価な労働力により製造業を中心に成長してきたが、近年は、第二次産業のGDPの伸び率よりも第三次産業のGDPの伸び率の方が高くなっている。
第三次産業のGDPの中では、卸・小売業の構成比が最も高く、金融業、不動産業が続いている。近年の傾向としては、金融業、不動産業の構成比が増加しており、更に情報通信や事業所向けサービスが大幅に拡大している。
鉱工業のGDPの中では、鉄鋼・金属、化学、食品の比率が高く、近年の傾向としては、化学、食品、自動車、コンピューター・電子機器の比率が拡大している。一方、鉱業、鉄鋼・金属の比率は減少している。
中国政府は製造業の強化方針として、国民経済・社会発展『第12次5か年計画』(2011~2015年)で、省エネ・環境、次世代情報技術、バイオ、ハイエンド装備製造、新エネルギー、新素材、新エネルギー車を「戦略的新興産業」と定め、これらの産業における競争力の確保を明記している。また、『第13次5か年計画』(2016~2020年)では、「戦略的新興産業」を更に細分化して、ICT産業、高級NC工作機器とロボット、航空・宇宙用機器、海洋土木設備及びハイテク船舶、先進型軌道系交通設備、省エネルギー・新エネルギー車、電力機器、農業設備、新材料、バイオ医薬品及び高性能機器の10分野を特に重要な産業と位置付けている。
鉱工業における企業分類別の傾向では、1990年代は国有企業の売上が60~70%を占めていたが、1990年代末頃から中小国有企業を中心に民営化が進められ、2019年では国有企業の売上構成比は33.8%となり、民間企業の売上構成比が37.1%となっている。また、外資企業の売上構成比は近年減少傾向であったが、2018年には少し回復してきて、29.1%である。
改革開放政策以降、中国の経済成長の原動力の1つである海外から中国への投資は、近年でも増加傾向を示している。一方、中国から海外への投資に関しては2016年をピークに、その後、中国の資本の流出制限で減少している。
また、著しい経済発展の一方で、環境汚染が課題となっている。第13次5か年計画では、「革新、調和、グリーン、開放、共有」の5つを理念としており、環境対策を強化している。今後、中国が成長を続けていく上で環境問題は大きな課題となっている。
出典:中国国家統計局
中国の貿易
中国は国際貿易に積極的に関与しており、輸出額は世界第1位、輸入額は第2位(第1位はアメリカ)である。
中国海関総署によると、2018年の貿易輸出額は約24,874億米ドルで、前年比9.9%増であった。主要な輸出先はアメリカ、中国香港であり、日本はこれらに次いで輸出額第3位である。輸出品目では、機械、輸送設備が48.6%、雑製品が22.7%、紡績製品・ゴム製品・鉱産物製品が16.3%である。なお、日本向けの主な輸出品目は、電気機器およびその部分品(27.8%)、原子炉・ボイラーおよび機械類(17.7%)、衣類および衣類附属品(メリヤス編み、またはクロセ編みのものに限る)(4.9%)、衣類および衣類附属品(メリヤス編み、またはクロセ編みのものを除く)(4.9%)、プラスチックおよびその製品(2.9%)である(2018年JETRO)。
また、中国の内需市場も成長し続けており、輸入額も急速に増加している。中国海関総署によると、2018年の貿易輸入額は約21,356.4億米ドルで、前年に比べ15.8%増加した。主要な輸入元は韓国、日本、中国台湾、アメリカである。輸入品目では、機械・輸送設備が39.3%、鉱物燃料・潤滑油及び関連原料が16.3%、食品以外の原料が12.7%である。なお、日本向けの主な輸入品目は、電気機器およびその部分品(24.7%)、原子炉・ボイラーおよび機械類(22.6%)、鉄道用および軌道用以外の車両(10.1%)、光学機器、写真用機器、映画用機器、測定機器、検査機器、精密機器および医療用機器(8.8%)、プラスチックおよびその製品(5.5%)である(2018年JETRO)。
出典:中国海関総署、WTO、International Trade and Market Access Data、ジェトロ「中国概況」、中国商務省、国際貿易経済協力研究所
中国に進出した日系企業と在留邦人人口
2017年、外務省の「海外在留邦人数調査統計(平成30年詳細版)」によると、中国に進出している日系企業数は32,349社である。日系企業による中国への進出地域としては、上海(10,043社)、大連(1,550社)、北京(984社)が人気な都市となっている。
日系企業の中国への進出は2011年にピークに達したが、2012年に日中間の政治リスクの高まりにより減少した。その後回復したが、2016年以降は、中国における人件費の上昇から東南アジアなどに生産拠点を移転させた企業があったことなどから減少した。また在留邦人数では2012年をピークに減少が続いている。現在、中国の在留邦人数はアメリカの次いて世界で2番目に多い、12万人以上超えた。このうち、約8割は民間企業関係である(2018年外務省)。
近年、中国経済は急速に発展し、新興産業が目覚ましいスピードで成長・進化している。今後は、経済の成熟に伴う成長の鈍化や米国との貿易摩擦、人口構造の変化等の懸念材料もあり、市場ニーズや産業構造の変化、政府方針・規制の状況などを的確にキャッチし、迅速に対応することが重要ではないだろうか。
出典:外務省「海外在留邦人数調査統計(平成30年詳細版)」
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