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タイ・モーターショーに見るEV市場の現状


タイのモーターショーは?

 日本には東京モーターショー(現:ジャパンモビリティショー)があるが、タイでも毎年2回、大規模なモーターショーが開催されている。
東京モーターショーは、自動車の最新技術やデザインに関する情報を紹介する見本市であるが、タイのモーターショーは、販売促進が主な目的となっており、来場者との商談が行われている。

 タイでは、大規模な自動車展示会として「バンコク国際モーターショー」と「タイ国際モーターエキスポ」の2つがあり、主催者と開催時期が異なる。バンコク国際モーターショーは、グランプリ・インターナショナルが主催で3月〜4月に行われる。一方、タイ国際モーターエキスポは、インターメディア・コンサルタントが主催で11月〜12月に開催される。

 バンコク国際モーターショー、タイ国際モーターエキスポともに、各メーカーの新型車の展示、技術の展示のほか、さまざまな販売推進キャンペーンなどが行われている。会場内で成約した場合、低金利ローンや1年間の無料保険など、通常よりもお得な条件で自動車を購入することができる。また、値段交渉も可能で、各ショールームを訪れる必要がなく、会場内で全てのブランドを一度に見比べられるため、車の購入を検討している人にとっては、期待されるイベントとなっている。

2025年のバンコク国際モーターショー

 2025年の「バンコク国際モーターショー(Bangkok International Motor Show 2025)」は、3月26日~4月6日に開催され、今回が46回目となった。日本、中国、欧米などの自動車メーカーが54社出展し、そのうち、自動車メーカーが41社、オート―バイメーカーが13社であった。

 毎年、開催期間内の成約数と人気のブランドが注目されている。タイでは2024年頃から、金融機関による融資の承認が厳しく、購買力の低下や高水準の家計債務といった課題があるものの、今回の四輪車の成約台数は予測を上回り77,379台となった。2024年の四輪車成約台数は
53,438台だったのに対し、2025年は前年比44.8%増となった。成約数のトップ5ブランドは、中国のBYDで、次いで、トヨタ、中国のGAC
(AION/HYPYEC)、中国のDEEPAL、ホンダである。以前は、トヨタ、ホンダ、日産、三菱、いすゞなど日系自動車メーカーが成約台数の上位5社に入っていたが、近年、中国の自動車メーカーのシェアが拡大している傾向にある。

 なお、成約したもののローン審査が通らず、購入を見送る場合もあり、会場での成約台数が必ずしも全国の実際の販売台数を反映している
わけではないが、それでもタイにおける電気自動車への関心の高まりが見える。タイの自動車購入者の意向としては、中国メーカーの電気自動車(BEV)と日本メーカーのハイブリッド電気自動車 (HEV) の 2 つに分かれている。

電気自動車の販売が急速に増加

 近年、タイでは、電気自動車の販売が急速に拡大している。2022年の自動車販売台数に占める電気自動車の割合は20.52%であったが、2023年には41.39%へと増加している。特に、バッテリー式電動自動車(BEV)への関心が高まっている一方、内燃機自動車の販売シェアが減少している。

 生産拠点に関しても2025年3月時点で、中国の自動車メーカー7社がタイに生産工場の設立を予定しており、7つの工場の投資額の合計は約
700億バーツになると予想されている。なお、2025年にBYDが年間生産能力15万台のタイ初の工場を開設している。

 

ハイブリッド電気自動車(HEV)の関心も高まっている

 前記した通り、バッテリー式電動自動車(BEV)の販売が急速に拡大しているが、一方でBEVの耐久性や性能劣化、安全性に対する懸念が
あり、販売価格の頻繁な値下げ、保険料の高止まりなどにより、一部の消費者は不安を感じ、ハイブリッド車への注目も集まっている。トヨタモータータイランドによると、2023年の総自動車販売台数に占めるハイブリッド電気自動車(HEV)の割合は12%であったが、2024年には
29%へと拡大している。トヨタ以外の日系企業も電気自動車(BEV)よりもハイブリッド電気自動車 (HEV)に力を入れている傾向があり、
いすゞやマツダなどもタイでのハイブリッド電気自動車 (HEV)生産ラインへの投資を継続的に増加する意向である。

 政府もハイブリッド電気自動車(HEV)とマイルドハイブリッド車(MHEV)に対するメーカーへの投資促進策を実施しており、2026年から2032年にかけて物品税率を引き下げる予定である。具体的には、ハイブリッド電気自動車(HEV)に対しては二酸化炭素(CO2)排出量に応じて、物品税率を6~9%、マイルドハイブリッド車(MHEV)に対しては物品税率を10~12%に引き下げるとしている。

今後も注目されるタイのモーターショー

 今後、タイの自動車市場は競争がますます激化することが予想されている。毎年注目を集めるタイのモーターショーは、技術展示としての
イベントだけではなく、大規模な自動車販売イベントとなっている。近年のモーターショーは、さまざまな要素を反映しており、電気自動車のトレンドも含め、タイの自動車市場の変化と消費者行動が反映されている。電気自動車(BEV)・ハイブリッド電気自動車(HEV)を含む全ての自動車メーカーが注目し、今後の事業戦略を検討している。

 

(2025年4月)

 

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