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市場拡大が期待されるタイの健康食品


近年、タイの健康食品市場が拡大している。2019年のタイの健康食品市場は約210億バーツ(約697億円)であったが、2020年には
約240億バーツ(約797億円)まで拡大すると予測されている(ユーロモニター)。日本の健康食品市場は、約1.2兆円(健康産業新聞)
と見込まれていることから、タイの健康食品市場は、日本の健康食品市場の1/10以下となる。但し、近年、タイ人の健康意識が高まっている
ことから、今後の市場拡大が期待されている。
 なお、タイでは「健康食品」の正確な定義がなく、主にサプリメント(補助食品)を意味している。ただし、最近は美容効果や
ダイエット効果のある健康食品が販売されており、ここでは、「健康促進のため摂取する食品」を健康食品と定義した。


タイ人の健康への関心は年々高まっている
 タイ王国統計局の国民の食品摂取に関する調査結果(4年ごとに実施)によると、2005年のサプリメント摂取者は5,965,277人であり、
総人口の約10%であったが、最新の調査結果によると2017年のサプリメント摂取者数は13,462,002人まで増加し、総人口の約20%となり、
2005年と比べると、約2倍になっている。
 また、タイの有名な調査機関であるDusit Pollが、2020年12月にタイ人の健康管理に関するオンライン調査を行ったところ、68.1%の人が
健康管理に関する関心が高まったと答えており、健康管理に関する費用という項目では59.4%が増加したと答えている。健康に関して特に
注意していることは、1位が新型コロナウイルスの防止(89.48%)、2位が食事(68.52%)、3位が運動(62.33%)、4位が健康食品の摂取(52.08%)となっている。
 上記の結果から、タイ人は以前と比べ健康への関心が高まっていることが分かる。

健康食品を摂取する目的
 タイ人の健康への関心が以前より高まったことで、健康食品も同様に注目され、売り上げが拡大している。市場及び消費者データを
専門とするSTATISTAが、2020年にタイで16歳以上の8,599人を対象にして、健康食品の摂取目的に関するオンライン調査を行ったところ、
調査結果は、1位が免疫力の強化(59%)、2位が肌、髪、爪質の改善、3位がストレス軽減と睡眠質の向上(25%)、4位がデトックス効果
(22%)、5位がダイエット効果(20%)、6位が老化防止(20%)、7位が体力向上効果(20%)となった。
 2020年の新型コロナウイルスの感染拡大以降、タイでは「NEW NORMAL」という言葉がトレンドになり、タイ国民全体の行動を様々な面で変えることによって、新しいノーマルが生活の基準となった。健康管理の面では、人々の健康への関心が高まり、健康をただ維持するだけではなく、STATSITAの調査結果の通り、新しく発生する病気に対して、免疫力を向上させる健康食品が求められている。免疫力の強化が可能な成分としては、ビタミンCやビタミンDなどが挙げられる。
 健康食品は、摂取する目的によって摂取すべき成分・摂取量が異なっている。大きく分けると、美容と健康の2つに分かれる。
 美容を目的とした製品は、主に女性や年齢層をターゲットとしており、肌・髪・爪の美容効果が期待される製品が多い。タイでは韓流ドラマやK-POPなどの影響から韓国の芸能人やアイドルのような白美肌を求めている女性が多い。また、インスタグラムなどのSNSの普及に伴って
ダイエット効果の健康食品も注目されている。
 健康を目的とした製品は、主に健康維持、免疫力の強化、糖尿病、高血圧、心臓病などの病気防止という機能が期待されている。
また、最近はスマホやパソコンを長時間利用している人が増えていることから、目の機能を維持・向上できる健康食品も注目されている。
STATISTAから老化防止機能を求める人も少なくない。


製品の進化‐手軽さ最優先
 サプリメントなどの健康食品は、苦味などを軽減可能な柔らかいソフトカプセルのような形態が最適だと言われている。高齢者向けの
場合は、食べやすさ・飲み込みやすさを優先すべきである。
 また、最近は、特に美効果のある健康食品が進化し、スナック、ヨーグルト、ドリンクなどの様々な形で顧客のニーズに応じて発売されている。健康食品でも手軽さが追及されている。

タイにおける健康食品の主なプレイヤー
 2017年に商務省に登録した健康食品の企業は約6,300社であり、総売り上げは8,700億バーツとなった。約10社の大手企業の売り上げが
全体の60%を占めている。健康食品の主なプレイヤーとしては、Centrum(アメリカ)、Redoxon(インドネシア)、Abbott(アメリカ)、
Otsuka(日本)、Caltrate(GSKイギリス)、 BLACKMORE(オーストラリア)、MegaWeCare(タイ)、Vistra(タイ)などが
挙げられる。
 健康食品業界は、主に通信販売によって製品を販売している中小企業が約95%を占めている。通信販売は、消費者と直接コミュニケーションがしやすく、流通チェーンが不要という理由から中小企業が参入しやすくなっている。また、中小企業の多くはOEM委託生産という方法で
健康食品の製造を外部に委託し、食品医薬品局(FDA)に商品を登録、販売している。しかし、最近は、中小企業の健康食品をめぐる商品の品質や過剰な宣伝などの問題が多数発生し、商品に対する消費者の信頼性が低下している。一方、日本の製品は、品質基準が高いことから、
高い信頼を得ている。


OTSUKAの成功例
 タイにおける大手健康食品メーカーの1つであるTHAI OTSUKAは、2016年にタイ国内にメディカル食品(医療食品)製造専用工場を
建設し、医療食品を「ONCE PRO」ブランドとして発売を開始した。一般の健康食品と比べ、医療食品は機能性・安全性が高いというメリットがあり、多くの病院に導入された。この商品は病人だけでなく、健康な人も購入している。医療食品の売上げを含めてTHAI OTSUKAの
2016年の売上げは2倍になった。


 コロナ渦が続く状況の中、タイ人はより健康への関心が高まっている。コロナ後でも人々の健康管理への関心は高まることが予測され、
今後も健康食品市場の拡大が見込まれる、一方、品質が低い製品や過剰な宣伝に不満を持つ消費者も増加しており、高機能・高品質品を求める声も聞かれている。タイの健康食品では日本語を用いたパッケージが高品質品として認知されており、今後も日本メーカーの健康食品の
需要は増加していくと見込まれる。

(2021年10月)

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