各国情勢コラム
Column

タイのニュース&トピックス:2024年8月前半

タイ日産自動車社がタイでの生産をハイブリッド車に集中する計画(8月6日)
 タイ日産自動車社は、タイ投資委員会(BOI)がハイブリッド自動車(以下HEV)の製造を促進するためのインセンティブパッケージを支援
したことにより、HEVの製造に注力することを発表した。
 同インセンティブパッケージの対象となるメーカーは、HEVを国内で生産するために少なくとも30億バーツを投資する必要がある。同社の
投資額は明らかにされていないが、30億バーツを上回るとみられる。同社は、2025年から2027年にかけて5車種を発売する予定で、現在、
タイで生産する車種を検討している。この5 つの新車モデルの発売により、同社の自動車販売が伸びると期待されている。
 また、来年には乗用車、ピックアップ、トラックを含む新型車をタイに輸入する予定である。同社の市場シェアは、2023年の2.2%から今年は3%に増加し、今年の国内の自動車販売台数は64万~65万台になると予想している。


 

オートバイの生産台数の減少が続く見込み(8月2日)
 タイ工業連盟(FTI)は、タイのオートバイの生産台数が今年後半も引き続き減速すると予測していることを発表した。
 オートバイ生産台数が減少する主な原因としては、家計債務問題により消費者の購買力が弱まったこと、景気低迷により人が支出に対して
より慎重になっていることをあげられる。今年のオートバイの生産台数は、国内販売用に約170万台、輸出用に約42万台と予測しているが、
今年上半期の総生産台数は、前年比13%減の119万台であった。このうち、完成車(CBU)は前年比11.8%減の約99万台、現地組立車(CKD)は前年比18.4%減の約20万台であった。また、1月~6月までの国内販売台数は前年比10.3%減の約89万台だった。
 輸出部門もオートバイメーカーにとって好ましい状況ではなく、今年上半期のオートバイ輸出は前年比3.1%減の約41万台、輸出額は327億
バーツで、前年比8.7%減となった。なお、自動車メーカーもオートバイメーカーと同様に、自動車業界の減速への対応に苦戦していると予測
している。

東芝タイランド社が今年の売上成長目標を20%に(8月8日)
 東芝タイランド社は、年間を通じて20%の売上成長を目標としていると発表した。
 同社の上半期の売上高は、前年同期比で26%増加しており、下半期は14%増加すると予想している。上半期の業績が好調だった要因は、
エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの大型家電の売上が好調だったことによる。同社では、2022年から製造工場を中国からタイに移転した後、
洗濯機と冷蔵庫の高級グレードの製造を増やしてきた。新モデル、特にフロントローディング式洗濯機の発売と工場の移転により、今年の
上半期に洗濯機の売上が47%増、冷蔵庫の売上が15%増を記録した。
 下半期も成長が続くとみており、主に高級の大型家電と小型家電の27の新製品を発売する予定である。同社の中・高級品は2019年に売上高の30%を占めていたが、現在はその比率が40%に増加しており、2025年までに50%にすることを目標としている。

 

 

消費者物価指数が4ヶ月連続で上昇(8月8日)
 タイ政府は、消費者物価指数(CPI)が4か月連続で上昇し、前年比0.83%上昇したことを発表した。
 これは主に、食品と石油価格の上昇によるものと見込まれている。また、7月の総合インフレ率は、前年比0.83%となった。上昇した主な
原因としては、石油価格の上昇と、特に調理済み食品、生鮮果物、米、もち米などの食品価格の高騰があげられる。コアインフレ率 (生鮮食品とエネルギーを除く) は、前年比 0.52% 上昇した。
 8月の総合インフレ率は、電気料金引き下げ措置がさらに3か月延長されたこと、豚肉価格の低下、農産物、特に生鮮野菜の価格の低下などがあるものの、7月と同程度に緩やかに上昇すると予想されている。商務省は、今年の総合インフレ率は現在の経済状況に合わせて 0.0% ~
1.0% (平均 0.5%) の範囲に収まると予測している。

タイ投資委員会(BOI)がイノベーションを創造するスタートアップ企業の支援を発表(8月2日)
 タイ投資委員会(BOI)は、対象業界で高い成長を示す可能性を持つスタートアップ企業に対して、1社あたり最大5,000万バーツの資金援助を提供すると発表した。
 同委員会は、民間部門のベンチャーキャピタルファンド(Venture Capital)との共同出資(Matching Fund)の形で、デジタル、
エレクトロニクス、次世代自動車、農業、食品、医療、バイオテクノロジー、ロボットなど高度技術を有する対象業界における潜在力の高い
スタートアップ企業に対して、1社あたり2,000万~5,000万バーツの補助金を支援する。イノベーションを創出・発展し、グローバル市場で
事業を拡大し、より早くユニコーンレベルに成長する潜在力がある国内スタートアップ企業を支援することを目指す。

 奨励申請者の資格に関しては、タイの法律により設立された法人であり、かつタイ国籍者が全株式の51%以上を保有しなければならない。
また、創業者(Founder)が60%以上の株式を保有しなければならず、明確な事業計画、特に次回の海外での資金調達計画、海外販売のための製品・サービスの輸出計画など海外に進出する計画を提示しなければならないとしている。

穴吹興産がタイ投資の重点を地方に置く(8月8日)
 穴吹興産グループは、過去5年間にバンコク都市圏の不動産市場に10億バーツを投資してきたが、今後は、チェンマイやコンケンなどの主要県をターゲットにすると発表した。
 同社では、今後、タイの不動産市場への投資に関して、実需のみに注目し、年間5件のプロジェクトを目標としている。別荘などのセカンド
ハウスとして購入するプーケットやパタヤより、メインの住まい・長期保有を目的で購入するチェンマイやコンケンなどに注目する。
 同社は2020年以降、現地デベロッパーとの合弁事業を通じてタイの不動産市場に総額10億バーツを投資してきた。これにより、タイは同社にとって日本以外での最大の投資先となり、ベトナムとインドネシアに続く東南アジア第3の市場となった。タイへの投資には、上場デベロッパーのThanasiri グループと中規模デベロッパーのEnrichグループと共同出資した5つの低層住宅プロジェクトが含まれている。
 タイの人口がピークを迎えたにもかかわらず、タイの住宅需要は依然として旺盛であり、今後もタイへの投資を継続して進めていくとして
いる。

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