インドの市場調査
インドの経済は生産年齢人口の拡大と世界最大の人口ボリュームに支えられ、今後も堅調に推移していくことが予想される。製造業を中心に輸出を拡大させており、今後は世界向けの貿易拠点としてインドの重要性は高まっていくことが見込まれる。良好な日印関係もインドへの日系企業の進出を後押ししている。
日系企業のインド進出を検討する際に、市場動向や製品・サービスのニーズ、参入企業の状況、流通チャネル、価格動向等の市場に関する情報の把握は不可欠である。また、業界によって、ニーズや課題は異なるため、業界動向調査・ニーズ調査をしっかり行うことが重要である。
マーケティングリサーチの方法としては、インターネットで情報を収集することもできるが、インターネットだけでは得られない情報も多くあり、インドの市場を十分に理解するためには、現地企業や消費者へのヒアリングが必要な場合も多くある。
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インドの基礎情報
【国名】インド、インド共和国、(ヒンディー語名:バーラト, Bharat)
【人口】約13.5億人(2018年)
【面積】328.7万平方キロメートル(世界第7位、日本の約8.7倍)
【GDP】2.84兆米ドル(2018年)
【一人当たりGDP】2,010米ドル(2018年、日本の約20分の1)
【首都】デリー/ニューデリー
【言語】ヒンディー語(連邦公用語)、英語、その他。多言語国家である。
【通貨】インドルピー(INR)
【宗教】ヒンドゥー教 79.8%, イスラム教 14.2%, キリスト教 2.3%, スィク教 1.7%, 仏教 0.7%, ジャイナ教 0.4%, その他0.7%
【地域】南アジア(南アジア地域協力連合、SAARC(1)加盟)
【気候】概ね4~5月 酷暑期(40℃以上の日も), 6~10月 雨季(多湿、洪水), 11~3月 乾季(10℃以下の日もあり、北部・山間部では降雪)である。地域差がある。
【年度】4月‐3月(日本と同じ)
(1)SAARC:南アジア地域連合(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブ、アフガニスタン)
インドの経済と人口
1991年の経済開放を境に、インドの経済は大きく変化した。1947年の独立以降インドは、国有企業と財閥主導の混合経済体制による工業化が一定程度進んだものの、国主導の社会主義的な経済政策は効果的な競争を阻害し、1980年代に入るまではGDPの年平均成長率が3.5%程度にとどまった。1980年代から徐々に自由化政策がとられ、成長率も5%台を記録するようになるが、1990年の湾岸戦争により、対外債務危機に陥ると、さらなる改革と一層の自由化が図られ、外資への規制も徐々に撤廃された。2000年代前半は平均7.8%ほどで推移し、リーマンショックの影響を受けた2008年を除いて年5%以上の成長を維持している。一人当たりGDPは2014年以降年平均7%で拡大している。失業率は2013年以降減少傾向がみられ、2019年は5.4%だった。IMFの予測では、新型コロナウイルスの世界的流行の前の段階で、2020年の成長率を、5.8%、2021年を6.5%としていた。2020年4月のIMFの世界経済見通しでは、新型肺炎の影響を受けつつも、インドは2020年もプラス成長を維持するとみられている。
人口は2018年時点で中国に次いで第二位だが、国連の2019年人口推計によると、2027年ごろに、インドの人口は中国を抜いて世界で最も人口の多い国になるという予測がなされている。人口増加率は2009年以降約1.2%で推移し、生産年齢人口(15歳から65歳未満)は全人口の66.8%(2018年)である。国連の推計では、インドは2040年から2050年の間で生産年齢人口の割合が減少に転じるという予測がなされており、今後約20年は人口ボーナスが期待できる。
産業別の就業人口は、2000年以前は農業が占める割合が大きかったが、2000年代から徐々に低下し、サービス業、製造業へ就業者数が移っている。
インドの産業
1947年の独立後、GDPの4割程度を農業部門が占めてきたが、減少傾向にある。1960年代後半から1970年代にかけて、緑の革命と呼ばれる生産性の飛躍的な向上により、食糧不足を乗り越えた。
GDPに占める工業部門の割合は長い間30%台に到達せず、工業化が十分に進んでいないという指摘もあった。2013年にモーディー首相主導のメイク・イン・インディア政策「インドでモノづくり」が導入され製造業(電子機器、自動車など)振興がすすめられている。2011年から2017年までのGVA(インドの統計では、2011年まで産業別のGDPだったものが、2011年以降は産業別のGVAに指標が変更されている。なお、GVAは総粗付加価値を表し、租税や補助金の換算方法がGDPと異なる。)に占める製造業の割合は平均31.5%となっており、政策の効果が表れている。GVAに占める鉱業の比率は3%程度、電気やガスなどエネルギー関連は2%ほどを占めている。製造業の内訳をみると、機械、金属、繊維、食品で全体の60%を構成している。特に機械が占める割合が大きい。
サービス部門の比率は独立以降GDPのうち30%程度であったが、拡大を続け、2000年近辺で50%を超えるようになった。2011年以降のGVAに占めるサービス部門の割合も拡大傾向にあり、2017年は48.2%である。サービス部門内の内訳では、住宅、流通、金融、輸送サービスで全体の8割を構成している。とくに不動産関連が近年拡大している。
Fortune誌が発表するFortune India 500によると、インドの収益トップ50企業のうち2010年は21社が国営企業であったが、国営企業の数は減少傾向にあり、2019年の収益トップ50社のうち16社が国営企業となっている。国営企業のほとんどが石油関連のビジネスを行う企業である。2010年から2018年まで収益のトップは国営石油会社のIndian Oil Corporationであったが、2019年にはじめて民間企業でReliance Industriesがトップになった。同社はインド3大財閥の一つであるリライアンス・グループの中心となる企業であり、石油を中心に、素材・化学、繊維、小売りなどを手掛けるコングロマリットである。2019年の収益ランキング19位に日系企業でスズキのインド法人であるマルチスズキがランクインしている。上位50社を業種別にみると、金融、自動車・二輪、鉱業・鉄鋼の企業数が増加している。
インドへの外国直接投資は、1980年代から拡大し、1991年の経済自由化を皮切りに積極的に奨励されている。投資額は2010年から2019年でおよそ4倍に拡大しており、2019年は約427億米ドルとなっている。
2000年から2019年までの直接投資の累計額ではモーリシャスがトップで全体の30%ほどを占める。モーリシャスはインド系移民の割合が高く、インドへの投資をインド政府が優遇してきた。またシンガポールが20%ほどを占める。これら2国は外国企業のインド投資の経由国として機能しており、税制面などでのメリットを受けられるため投資額が大きい。日本は7.2%を占め、シンガポールに次ぐ3番目の投資規模となっている。インドへの外国直接投資累計額に占める日本の投資額の割合は2010年から2019年の間で2.25倍に拡大した。
外国直接投資額の第二次産業における構成比では、コンピューター関連が18.8%、自動車が10%、有機化学が7.5%、医薬品、建設、エネルギーがそれぞれ7%などとなっている。外国直接投資額では自動車が前年比平均20%ほどで拡大している。
サービス部門の外国直接投資額の構成比では、IT・通信が17.6%、流通が12.6%、不動産が12%、宿泊が6.8%となっている。流通関連の外国直接投資額は2009年からの10年で13倍に拡大している。
インドの貿易
輸出
インドの輸出額は、2011年から2018年までで前年比平均4%ほどで拡大していた。2019年は米中対立から生じた世界的な貿易停滞の影響を受け、前年比20%ほど落ち込み2,640億米ドルとなった。2019年の主要輸出先はアメリカ(輸出額全体の16.9%)、UAE(同9.2%)、中国(同5.5%)、シンガポール(同2.8%)となっている。アメリカへの輸出は、2010年から2018年までで2倍に拡大している。
2019年の主要輸出品目は鉱物性燃料(インドからの輸出額の13.9%)、真珠・貴石類(同11.7%)、機械類(同6.6%)、有機化合物(同5.6%)、鉄道以外の車両(同5.6%)となっている。医薬品は2019年で輸出額全体の5.5%を占めているが、2010年から2019年で2倍に拡大している。医薬品製品の主要輸出先はアメリカ(同製品輸出額の38.8%)、南アフリカ(同3.2%)、ロシア(同2.9%)、イギリス(同2.8%)、ナイジェリア(同2.4%)である。
輸入
インドの輸入額は2011年から2018年までの期間では年平均5%ほどで拡大している。輸出同様、輸入も2019年に前年比21%の落ち込みがみられ、2019年は約4,031億米ドルとなった。2019年の主要輸入元は中国(インド輸入額の14.4%)、アメリカ(同7.6%)、UAE(同6.4%)、サウジアラビア(同5.7%)、イラク(同4.9%)である。このうち、イラクは2010年から2019年までで、輸入額は2.2倍に拡大している。
2019年の主要輸入品目は原油など鉱物性燃料(インド輸入額の32.1%)、真珠・貴石(同11.6%)、電子機器(同10.7%)、機械(同9.2%)、有機化合物(同4.3%)である。航空・ロケットの機体は2019年で輸入額全体の1.6%を占めるが、2010年から2016年で2.4倍ほど拡大していたが、2019年にかけてやや減少傾向にある。輸入額が2倍になったアメリカからの主要輸入品目は、鉱物性燃料(アメリカからの輸入額の22.9%)、真珠・貴石(同17%)、機械類(同12.8%)、電子機器(同6.5%)、有機化合物(同4.7%)である。このうち鉱物性燃料はシェール革命の影響で2010年から2019年までで、輸入額がおよそ6倍拡大している。
対日貿易
日本への輸出額は2013年をピークに縮小傾向にあり、2019年は約38億米ドルとなっている。日本への主要輸出品目は有機化合物(日本への輸出額の12.2%)、鉱物性燃料(同10.1%)、魚・甲殻類(同9.6%)、真珠・貴石(同9.0%)、機械類(同5.8%)である。有機化合物は、2010年からの10年間で輸出額が2.5倍、鉄道を除く車両・輸送機器は5.2倍に拡大している。
日本からの輸入額は2010年から2018年までで前年比平均6.4%で拡大していたが、2019年は前年比17%減少し、約106億米ドルとなった。日本からの主要輸入品目は、機械類(日本からの輸入額の25%)、電子機器(同10.9%)、鉄鋼(同8.8%)、プラスチック製品(同7.5%)、銅(同6.9%)である。このうち、プラスチック製品の輸入額が2010年から2019年で2.8倍に拡大している。また、銅の輸入額は2010年から19年で25倍に拡大している。国際銅協会インド支部は、政府のインフラ投資やスマートシティの拡大、急速な都市化に伴い、銅需要は今後も拡大すると見込んでいる。
インドに進出した日系企業と在留邦人人口
在留邦人(長期滞在者・永住者)の数は増加傾向にあり、2009年から2018年で2.4倍に拡大し、2019年は9,838人となっている。インドの渡航にはビザが必要だが、2017年より、商用・観光・会議・医療目的で日本国籍者向けに、インド到着時に申請できるアライバルビザ(日本人専用のカウンターが用意されていた)が可能になった。ビザの取得方法も簡素化され、日印関係の深化に伴い、両国の往来は盛んになっている。
日系企業のインド進出も拡大している。2009年から2018年でインドに進出した日系企業の数は2.3倍増加し、1,441社となっている。外務省の統計によると、2017年の日系企業の拠点数(支店や工場などを区別)は、1位が中国(32,349か所)、2位アメリカ(8,646か所)に次いでインドは3位(4,805か所)である。2017年までの5年間の日系企業の拠点数は前年比平均で24.7%増加している。
2017年の業種別の拠点数では特に多いのが製造業で1,635か所(日系企業の拠点数の34%)、金融・保険が1,384か所(同28.8%)、卸・小売が634か所(同13.2%)である。
良好な日印関係に後押しされ、日本の製品やサービスへの関心度は今後も高まっていくことが想定される。広大な国土の中で様々な価値観を持つ人々が暮らすインドでは、それぞれの地域の実情にあったビジネスモデルの構築が重要である。現地のニーズを的確に把握し、ニーズに応じた企業活動を行う上で、綿密な市場調査が必要不可欠である。
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