アメリカの市場調査
アメリカは長年にわたり在留邦人が最も多い国で、日本にとって最も重要なビジネス相手国の一つである。
アメリカ経済は大きな成長こそないものの、着実に市場規模を拡大している。また、多くの先進国で人口減少が進む中で年間0.7%程度の人口増加率を維持している。近年のアメリカ経済の傾向としては、失業率の減少が続き、個人消費が拡大し続けており、不動産業や小売業への投資が活発である。一方で、米中貿易摩擦や社会情勢の変化など懸念材料も散在している。
日系企業がアメリカ進出を検討する際に、市場動向や製品・サービスのニーズ、参入企業の状況、流通チャネル、価格動向等の市場に関する情報の把握は不可欠である。また、業界によって、ニーズや課題は異なるため、業界動向調査・ニーズ調査をしっかり行うことが重要である。
マーケティングリサーチの方法としては、インターネットで情報を収集することもできるが、インターネットだけでは得られない情報も多くあり、アメリカの市場を十分に理解するためには、現地企業や消費者へのヒアリングが必要な場合も多くある。
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アメリカの基礎情報
【人口】約3億3千万人(2020年)
【GDP】約20.5兆ドル(2018年)
【一人当たりGDP】 約6万3千ドル(2018年)
【面積】983万㎢
【通貨】USドル
【人種】2018年の国務省による推計でヒスパニック系以外の白人が60.4%、ヒスパニックまたはラテン系が18.3%、黒人が13.4%、アジア系が5.9%、その他が2.2%となっている。
【宗教】Pew Research Centerの調べによると、キリスト教系が70.6%、ユダヤ教が1.9%、イスラム教が0.9%、仏教とヒンドゥー教がそれぞれ0.7%、無宗教が22.8%となっている。
【言語】英語
【首都】ワシントンD.C
アメリカの経済と人口
アメリカの経済は2010年以降、GDPが9年連続で成長しており、2019年は前年比2.3%の増加と、堅調に推移している。GDPの7割近くを占める個人消費部門では耐久・非耐久財、サービス分野ともに好調で、2018年はで耐久・非耐久財が前年比約4.5%、サービスが約5%の成長とアメリカ経済を牽引している。特に耐久・非耐久財では自動車、家具など、サービス分野では住居費・公共料金、医療費、投資・保険部門などの消費額が大きく成長している。
重要な経済指標の一つである失業率は、2009年の10月に10%に達したのをピークとし、以降は年々減少傾向にあり、2019年の12月の失業率は3.5%とアメリカ経済の好調ぶりを示している。
近年のアメリカ経済の好調は税制改革による企業の設備投資額の増加や、シェールガスの増産、新NAFTA(USMCA)の締結など様々な要因によるものだと考えられる。その一方で、米中貿易摩擦や原油価格の下落、中間層の所得の伸び悩みなど、今後の経済の見通しへの懸念も存在している。
近年のアメリカの人口成長率は約0.7%で推移しており、年間200万人ほど増加している。2018年の年齢別の構成比では14歳以下が約20%、15~64歳が約65%、65歳以上が約15%となっており、徐々にではあるが高齢化が進んできている。人種別では白人では58歳が年齢の最頻値であるのに対し、ヒスパニック系では11歳、黒人では27歳、アジア人では29歳が最頻値と人種によって大きな差が見られる。(Pew Research Center)また、平均寿命は2014年に78.9歳であったが、その後オピオイドクライシスなどの影響で減少または停滞しており、2018年に4年ぶりに前年比で増加し、78.7歳となっている。(NY Times)
アメリカの産業
アメリカの産業構造はGDPに対する割合でみると一次産業が約1%、二次産業が約20%、三次産業が約80%となっている。コンピューターデザインやマネージメントなどの専門的なサービスで1%程度の増加や公共分野の2%ほど減少などは認められるものの、過去10年間で産業構造はほぼ変化していない。
アメリカの労働者の約85%がサービス業に就労しており、製造業と農業に就労している労働者の割合はそれぞれ約14%と約1%となっている。
産業別の就労人口においても大きな変化は見られないが、過去10年で医療・福祉分野と教育分野では年間2%程増加しており、今後10年間も年率1.5%ほどの増加傾向が予想されている。医療・福祉分野の増加傾向は高齢化が進行してきている社会情勢により、需要が高まっているためである。アメリカ看護大学協会によると、現在のアメリカで特に人口の多いベビーブーム世代と呼ばれる50代前半から70代前半の多くが今後、医療支援を必要とすることが予想され、看護師の不足が懸念されている。
アメリカは世界最大のFDI(外国直接投資)受容国であり、2018年のアメリカ国内のFDI額は約4.35兆ドルである。また、地域別でみるとヨーロッパからの投資が最も多く、全体の7割弱を占めている。それに次いで、アジアパシフィックからの投資額が約17%、カナダが約12%、その他地域が約4%となっている。アメリカへのFDIは年々増加傾向にあり、過去10年間の平均で年間7%程度増加している。産業別では、外国直接投資全体の4割ほどが製造業に向けられているが、2015―2018年間の年間平均増加率で比較すると、製造業が約7%なのに対し、コンピューター・電子機器関連は約13%、不動産業で約15%、小売業においては約23%増加しているなど業種により偏りが見られる。
アメリカの貿易
輸出
アメリカの2019年の商品・サービスの合計輸出額は約2兆5,000億ドルで、前年比マイナス0.1%だった。特に商品の輸出は前年比マイナス1.3%減少である。但し、自動車・自動車部品、消費財、石油などの輸出は金額ベースで過去最高を記録している。サービスの輸出額は約8,500億ドルで過去最高であった。2019年の主要輸出品目は、民間航空機関連の約1,200億ドルを始めとして、原油、医薬品、自動車部品、工業機械、石油関連品、自動車、半導体などが上位に位置している。
過去10年のアメリカの輸出額は増減を繰り返しているものの、全体的には増加傾向にあり、2019年の輸出額は10年前と比べ約58%増加している。品目別では民間航空機関連や原油の輸出が大きく拡大している。2015年、2016年、2019年は前年比で輸出額が減少しているが、いずれの年も商品の輸出の減少が影響した形となっており、サービスの輸出は10年間継続して増加している。
アメリカの輸出先を見ると、NAFTA加盟国であるカナダとメキシコがそれぞれ全体の輸出額の17.8%と15.6%を占めており、次いで中国が6.5%、日本が4.5%となっている。
輸入
アメリカの2019年の輸入額は約3兆1,165億ドルで前年比マイナス0.4%であった。そのうち、商品の輸入が2兆5,190億ドルで、サービスの輸入額は5,975億ドルで過去最高を記録している。2019年の主要な輸入品は自動車、医薬品、原油、自動車部品、携帯電話である。品目別の傾向としては、原油の輸入額が減少する一方で、自動車、医薬品の輸入額は増加している。
アメリカの輸入元の構成比では中国が18.1%で最も多く、次いでメキシコが14.3%、カナダが12.8%、日本が5.7%となっている。2019年にベトナムからの輸入額がイギリスを上回り、第7位の輸入元となった。中国からの輸入は携帯電話やコンピューターなどが多く、メキシコからは自動車部品、日本からは自動車の輸入が多い。
アメリカは長年貿易赤字を抱えており、2019年の貿易赤字は前年と比べ1.7%減少したものの、6,168億ドルの赤字となっている。特にメキシコとEUに対する貿易赤字は過去最高となっている。2019年の日本に対する貿易赤字は約690億ドルとなっており、前年と比べて約18億ドル、赤字額が増加している。
対日貿易
アメリカの対日貿易は日本からの輸入が年間1,400億ドルほどなのに対し、輸出は年間700億ドルほどで、毎年700億ドルほどの赤字を計上している。
2019年の対日輸出額は約747憶ドルで、主な輸出品目は食料品・農水産物、化学品等、鉱物性燃料、一般機械、光学・医療機器などである。
2019年の対日輸入額は約1,436億ドルで、主な輸入品は自動車・同部品、一般機械、電気・電子機器、化学品等である。
アメリカに進出した日系企業と在留邦人人口
外務省の統計によると、在米邦人の数は年々増加しており、2018年時点の推計は約44万7千人で、前年比4.9%の増加となっている。また、過去5年間で平均1.7%程度増加し続けている。アメリカは長年にわたり在留邦人が最も多い国で、アメリカの次に多い中国と比較して、3倍以上の在留邦人が暮らしており、在留邦人全体の30%以上がアメリカに居住している。
2018年時点でアメリカにある日系企業の現地拠点の数は約8,600拠点となっており、中国に次ぐ数である。また、2017年時点の州ごとの外国企業の拠点数ランキングではすべての州で日系企業が上位3位以内であり、そのうち36州で首位となっている。日系企業の拠点が特に多い州としては、カリフォルニア、イリノイ、テキサス州などが挙げられる。
アメリカに進出している日系企業の業種は製造業の割合が最も高く約40%となっており、次いで卸売業が約25%、サービス業が約20%となっている。
アメリカは日本にとって最も重要なビジネス相手国の一つである。近年は中国の台頭などもあるが、世界一の経済大国としての位置づけは変わっていない。新興国とは異なり急激な成長や、大きな産業構造の変化などは見込めないが、日本企業にとっては前例も多く、安定した市場が存在することは魅力的である。
その一方で、中国との貿易摩擦や、人口構造の緩やかな変化、社会情勢などを鑑みると、アメリカで事業を進めるには、現地の制度、消費文化、ビジネス習慣などの特徴をはじめ、各分野の最新情報を緊密に把握することが不可欠である。
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