フランスの市場調査
フランスの経済は緩やかながら着実に成長を続けており、製造業やサービスを中心とした産業基盤が強固である。良好な日仏関係を基盤に、近年では日本とEUの経済連携協定も締結され、両国の結びつきはますます強まっている。基本的には内需が強いが、EU圏内の経済活動も活発である。
日系企業のフランス進出を検討する際に、市場動向や製品・サービスのニーズ、参入企業の状況、流通チャネル、価格動向等の市場に関する情報の把握は不可欠である。また、業界によって、ニーズや課題は異なるため、業界動向調査・ニーズ調査をしっかり行うことが重要である。
マーケティングリサーチの方法としては、インターネットで情報を収集することもできるが、インターネットだけでは得られない情報も多くあり、フランスの市場を十分に理解するためには、現地企業や消費者へのヒアリングが必要な場合も多くある。
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フランスの基本情報
【人口】6,706.4万人(2020年1月1日時点, フランス国立統計経済研究所による。)
【面積】63.3万平方キロメートル、本土は55.2万平方キロメートル(在日本フランス大使館による。日本の約1.7倍)
【GDP】2.7兆米ドル(2019年, 名目・推定値, IMF Outlook,2019 Oct.による。)
【一人当たりGDP】41,470米ドル(2018年, 世銀データベースによる。)
【首都】パリ
【通貨】ユーロ
【地域】ヨーロッパ、EU加盟
【言語】フランス語(公用語)
【宗教】キリスト教、イスラム教、ユダヤ教など
【気候】日本と同様の四季、梅雨なし。東京よりやや気温は低め。(パリの場合)
【年度】暦年通り(1-12月)
フランスの経済と人口
フランスの経済は緩やかながら着実に成長を続けている。第二次世界大戦後、社会主義的な国有企業主導の社会主義的経済と、市場経済の制度を両立させた社会主義混合経済体制が敷かれた。そのような名残もあって、「大きな政府」としての国の経済への関与が歴史的に強い。ただ、国有企業は減少傾向にあり、企業活動への国の介入は弱まりつつある(例えば、同国を代表する自動車メーカーのルノーは1991年に民営化され、2019年12月時点のフランス政府の出資比率は約15%である)。
2009年にリーマンショックの影響を受け実質GDP成長率は2.9%のマイナス成長を記録した。また、2015年にはギリシャ経済危機や、11月に発生したフランス同時多発テロの影響を受け、GDPが落ち込んだものの、その後はプラス成長を続けており、2019年は1.3%のプラス成長となった。
一人当たりGDPはEU諸国の中ではやや高い位置であるが、ドイツとの差が拡大しており、2018年は41,470米ドル(ドイツは47,616米ドル, 世銀名目値)となった。2015年の経済の低迷により、一時的に一人当たりGDPが落ち込んだものの、2016年からの3年間は前年比平均4.2%で拡大した。
フランス経済の中で特徴的なのが高い失業率である。EU諸国の中で比較すると、2018年にはギリシャ、スペイン、イタリアに次いで4番目に高い失業率で9.06%となった(EU平均は7.27%)。2015年に10.36%を記録して以来、失業率は低下傾向にある。年齢別でみると、若年層の失業率がほかの年代よりも高いことがわかる。
人口は、移民の流入と高齢化の進展が拮抗しているが、2011年以降緩やかに増加を続け、2020年は6,706万人となった。人口構造を見ると、15歳から64歳までの生産年齢人口は2011年以降減少傾向にあり、2020年には全人口のうち61.7%を占めている。65歳以上の人口は2011年以降一貫して増え続けており、2019年に全人口の20%を超え、2020年は20.5%となっている。一方でフランス以外の外国で生まれ、フランスに居住地を移した人の全人口に占める割合は増加傾向にあり、2018年は12.5%がフランス以外の国で生まれ、フランスに移住をしている。フランスに移住をした人の出身地域の内訳はアフリカが半数近くを占め、アルジェリアやモロッコが多数を占める。またポルトガルなどEU諸国からの移民も多い。
フランスの産業
フランスの産業構造は、一般的な先進国の産業構造と同様であり、GVA(総粗付加価値を表し、租税や補助金等の換算方法がGDPと異なる)構成比は一次産業が約2%、二次産業が約25%、三次産業が約73%となっている。金額でみると、三次産業が付加価値を押し上げていることがわかる。産業別の労働人口も産業構造と似た構成になっており、一次産業が約2.5%、二次産業が約20%、三次産業が約77%となっている。
製造業部門の付加価値の内訳をみると、食品・飲料・タバコが全体の18%を占めており、自動車など輸送機器は12%である。また、Fortune誌のFortune Global 500にランクインするフランス企業のなかで売上高を比較してみると、二次産業ではエネルギー関係が45~50%弱を占めている。フランス企業の売上ランキングは毎年石油メジャーのトタルと金融・保険のAXAがトップを争う形になっている。自動車関連産業は全体の2割ほどを占め、特に2012年以降拡大している。2019年のFortune Global 500にランクインする自動車メーカーはシトロエンなどを傘下に持つプジョー、ルノーであり、タイヤメーカーのミシュランもランクインしている。二次産業ではこのほか建材メーカーのSaint – Gobainや化粧品のL’Oreal、食品メーカーのダノンなどがフランスを代表する企業である。
三次産業のGVA構成比をみると、公共サービスや教育などが3割弱を占め、流通や宿泊、飲食などが約2割を占める。フランスは観光業が盛んであり、フランスを訪れる外国人観光客数は長年フランスがトップを占め、2018年は8,932万人であった。2020年までに観光立国を目指す日本は4,000万人の外国人観光客を目標としているが、フランスはその二倍の人が一年間で訪れていることになる。展示会や見本市などビジネス目的でフランスを訪れる「ビジネス観光客」も多い。
フランスへの直接投資の主な投資元内訳は、イギリス(2017年の直接投資額の69%)、イギリスを除くEU(同16%)、日本(同4%)となっている。産業別では、サービス(2018年のフランスへの外国直接投資額の68%)、製造業(同25%)、建設(同2.7%)となっている。
フランス貿易投資庁-ビジネスフランスによると、2018年は53件の日系企業による対仏直接投資が行われ、1,195人の雇用が創出された。また同年は日本電産とプジョー・シトロエンなどのPSAグループによるトラクションモーターの開発から販売を行うJVの設立が主要なプロジェクトであった。機能別にみると生産や組み立てを行う拠点に関する直接投資が日本の対仏投資の43%を占めた。業種では、プロジェクト数でソフトウェア・ITサービス関連(対仏投資全プロジェクトの19%)、食品・農業・漁業(同11%)、機械(同11%)などとなっている。雇用数では自動車製造や部品関連の産業が、直接投資によって新たに創出した雇用のうち39%を占めている。
フランスのビジネスに近年大きな影響を与えているのが、環境保護意識の高まりである。フランス政府は、マイクロプラスチックの海洋汚染問題など、プラスチックごみが環境に及ぼす害を強く認識しており、プラスチック製のレジ袋使用禁止を命じた(2016年)。最近では、新型コロナウイルス感染拡大による経済の落ち込みからの復興経済対策の中に、電気自動車(EV)を新たに購入する消費者への購入補助金の支給が盛り込まれ、自動車産業向けの支援の一環として、EVの国内生産量の増加を目標に掲げている。またフランスではパリを中心に、PM2.5など微粒子に起因する大気汚染も深刻になりつつあり、自動車の排ガス測定や空気清浄機などのニーズも高まることが考えられる。
フランスの貿易
輸出
フランスの輸出額は2009年より拡大傾向にある。2015年の経済停滞により2016年にかけて落ち込むが、その後は拡大を続け、2018年は5,685億米ドルとなった。2018年の主要輸出先はドイツ(フランスの輸出額の14%)、アメリカ(同8%)、スペイン(同8%)、イタリア(同7.5%)、ベルギー(同7%)、イギリス(同6.7%)となっている。2018年の主要輸出品目は輸送機器(フランスの輸出額の20%)、機械・電子機器(同19.6%)、化学品(同15%)となっており、輸送機器のうち4割程度を航空機やヘリコプター、宇宙船とその部品が占め、4割弱を自動車関連の製品及び部品が占めている。
輸入
輸入額も輸出額とほぼ同様の推移をしている。2016年より拡大を続け、2018年は6,594億米ドルとなった。2018年の主要輸入相手はドイツ(フランスの輸入額の15%)、中国(同8.9%)、イタリア(同7.6%)、ベルギー(同7%)、スペイン(同6.5%)、アメリカ(6.4%)となっている。2018年の主要輸入品目は機械・電子機器(フランスの輸入額の22%)、輸送機器(同15%)、燃料(同11%)、化学品(11%)、金属(7%)、プラスチック・ゴム(5%)となっており、機械・電子機器では中国、ドイツ、アメリカ、イタリア、イギリスが主要な輸入相手になっている。
対日貿易
フランスから日本への輸出は2015年にフランス経済の停滞により大きく落ち込んだが、2016年以降は緩やかに拡大しており、2018年は78億米ドルとなった。主要輸出品目は化学品(対日輸出額の26%)、輸送機器(同14%)、食品(同14%)、機械・電子機器(同14%)となっている。特に輸送機器の拡大が目立っており、2009年から10年で3.6倍拡大し2018年は11.2億米ドルとなった。
日本からフランスへの輸入は2015年に93億米ドルと2009年以来過去最低になったが、その後は拡大傾向にあり、2018年は119億米ドルとなった。主要輸入品目は機械・電子機器(対日輸入額の39%)、輸送機器(同28%)、化学品(同13%)、プラスチック・ゴム(同3%)となっている。輸入品では特に輸送機器が2009年からの10年で24%拡大し、33億米ドルとなった。
日本とフランスを含めたEUとの結びつきは強まっており、2018年に日EU経済連携協定(EPA)の署名手続きが行われ、2019年2月より発効されている。このEPAにより世界のGDPの約3割をカバーする経済圏が誕生したことになる。フランスからのワインなどの輸入が今後拡大すると見込まれている。
フランスに進出した日系企業と在留邦人人口
フランスに滞在する在留邦人の数は増加傾向にあり、2014年以降前年比平均6.5%で拡大し2018年は4.4万人となった。一方でフランスに進出する日系企業の拠点数も2010年以降増加傾向にあり、2017年は719か所の日系企業の拠点がフランスに存在している。在フランスの日系企業の拠点の内訳は、製造業が最も多く全体の35%を占める。そのほか卸・小売(同24%)、宿泊、飲食サービス(同8%)、学術研究、専門・技術サービス(同8%)、運輸・郵便業(同5%)、情報通信関連(同4%)となっている。
フランスは基本的には内需が経済をけん引しているといわれるが、ドイツをはじめとしたEU圏内の結びつきは強い。観光立国であり、世界各国からビジネス等を含め様々な目的でフランスに人や情報が流入している。また日本とフランスの関係も良好であり、フランス人の日本の文化などへの興味も高い。日EUEPAなどの枠組みをはじめとした日本とフランスの経済的結びつきは今後さらに強まっていくだろう。環境への意識も大変高く、新たな環境技術に対するニーズは高まっている。企業にとっては、環境規制への適応が企業活動を円滑に行う上での課題になるだろう。
日系企業がフランスでビジネスを行ううえで、現地の需要を的確に把握した企業活動戦略の策定が必要不可欠となる。フランスには、ルノーやプジョーなど自動車産業をはじめとした世界的なメーカー・企業が多く存在しており、これらの企業の動向把握は市場参入やパートナー選定を行う上で有益になる。またパリをはじめとした大都市圏と地方、あるいはEU圏内のその他の国などそれぞれの地域の実情にあった製品・サービスの投入が求められる。フランスでの企業活動を円滑に進めるなかで、綿密な市場調査は一つの重要なファクターになるだろう。
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