ドイツの市場調査
ドイツ市場は成熟したマーケットであるが、近年は人口の増加や輸出額の増大などにより、ヨーロッパ地域でも安定して成長を続けている。また、他のヨーロッパ域内の先進国と比べても日系企業が多く進出していることから、新たに進出を目指す企業にとってのビジネス環境は比較的整っている状況である。ドイツは他の先進国と比べてGDPに占める製造業の比率が高く、自動車や電気機器、化学産業においてグローバルで展開している企業も多く存在する。近年では環境対策への法規制が進む中で脱原子力が掲げられるなど、再生可能エネルギー業界への注目度も増している。また2015年以降、政府の財政が改善されている点や、EU圏内での貿易が全体の約60%を占めるものの、特定の貿易相手国への依存性が低い点も経済の安定性という観点からはプラスであると考えられる。
その一方で、ドイツ国内の社会情勢は減少傾向にあった人口が増加に転じ、新規市民権の獲得者数が増加することで年代別の人口構成比が変化しつつあるなど、今後一定の変化が起こりうると予想される。また、国外ではイギリスのEU離脱や、中国の一帯一路政策、アメリカとの外交関係などドイツ経済に大きな影響を与えうる可能性がある。
日系企業がドイツ進出を検討する際に、市場動向や製品・サービスのニーズ、参入企業の状況、流通チャネル、価格動向等の市場に関する情報の把握は不可欠である。また、業界によって、ニーズや課題は異なるため、業界動向調査・ニーズ調査をしっかり行うことが重要である。
マーケティングリサーチの方法としては、インターネットで情報を収集することもできるが、インターネットだけでは得られない情報も多くあり、ドイツの市場を十分に理解するためには、現地企業や消費者へのヒアリングが必要な場合も多くある。
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ドイツの基礎情報
【人口】約8,292万人(世界銀行、2018年)
【面積】137,988 mi²
【GDP】約3兆9480億ドル(世界銀行、2018年)
【一人当たりGDP】47,477ドル(世界銀行、2018年)
【言語】ドイツ語
【通貨】ユーロ
【人種】ドイツ人87.2%、トルコ人1.8%、ポーランド人1%、シリア人1%、その他9%(CIA、2017年推計)
【宗教】カトリック27.7%、プロテスタント25.5%、イスラム教5.1%、正教会1.9%、その他キリスト教系1.1%、その他0.9%、無宗教37.8%(CIA、2018年推計)
【気候】北部は海洋性気候、中・南部は大陸性気候。夏は湿度も低く過ごしやすいが、冬の寒さは厳しい。(阪急交通社)
【その他】ヨーロッパで一番人口密度が高いが、全体的には分散している。2011年の推定で土地の約5割が農業に使用され、森林が約3割、その他が2割となっている。(CIA)
ドイツの経済と人口
ドイツ経済の2018年のGDPは約4兆ドルで、ヨーロッパで最大の経済規模である。2008-2009年の金融危機により、2009年のGDPは前年比マイナス5.7%と大幅に落ち込んだものの、ドイツ政府による経済対策などもあり、近年は平均約2%の伸び率となっている。2019年のGDPの構成比は個人消費が52.2%、政府支出と総資本形成がそれぞれ20.3%と21.4%、貿易が6%となっており、過去10年の間に大きな変化はない。また、一人当たりGDPは2018年時点で約47,000ドルとなっており、近年は平均1.5%程度の伸び率となっている。近年のGDPの成長要因としては、人口の増加や低い失業率などによる個人消費の好調がけん引役となり内需を拡大したことや、輸出額の増加などの影響などがあげられる。
また、ドイツ政府は財政の健全化を進めており、金融危機直後の2010年には国と地方を合わせてGDP比4.1%の財政赤字を抱えていたが、2011年には0.8%まで縮小し、2016年には黒字化を達成している。なお、2009年には憲法を改正し、ドイツ政府の財政赤字を2016年のGDP比0.35%以上を上回ることを禁止することを定めている。
2018年のドイツの人口は2018年約8,292万人で、EU圏内では最大の人口である。その一方で、出生率は日本と同程度の1.4前後が続き、2004年から2011年まで人口が減少し続けていたものの2012年からは増加傾向にあり、出生率も1.6程度にまで回復している。ただし依然として人口回復に必要な出生率に届いていないことから、近年の人口増加は移民の増加が関係していると見込まれる。年代別人口の構成比の推移では、高齢化が進行しているものの、2013年からは40歳以下の人口の割合が増加傾向にあり、これも移民人口の増加が要因と考えられる。
ドイツ連邦統計局の調査によると、ドイツの登録失業率は金融危機後の2009年には約9%と高い水準にあったものの、その後は継続して減少傾向にあり2019年には5.5%となっており、東西ドイツ統一以降で最低水準を記録している。なお地域別の傾向として、依然旧東ドイツ地域の失業率は旧西ドイツ地域と比較し高い傾向がつづいているが、その格差は近年縮小傾向にある。
ドイツの産業
ドイツの産業別の構成比は一次産業が約1%、二次産業が約30%、三次産業が約70%となっており、近年はわずかに三次産業の割合が増加し、二次産業の割合が減少する傾向にある。全体の約7割を占める三次産業の内訳は、公共・教育・医療分野が占める割合が最も多く約27%で、次いで運輸・宿泊・外食分野が約23%、ビジネス業と不動産業がそれぞれ約16%と約15%となっている。
ドイツ産業は先進国(G7)の中でも特に二次産業が占める割合が高くなっており、そのうち自動車製造業がドイツの製造業全体の売上高の20%以上を占めている。また、工業機械が約13%、金属加工が約12%、食品加工が約8%、化学品が7%などとなっており、ドイツの製造業の中心となっている。各業種に世界的企業を有していることも特徴で、自動車産業でフォルクスワーゲンやBMW、化学品ではBASF、電気機器のシーメンスなどが挙げられる。
ドイツへの海外直接投資額は2011年に約670億ドルで一度ピークを迎えたのち減少が続き、2014年にはドイツ国内で多くの資産を保有するオランダからの直接投資が引き揚げ超過になった影響から全体でもマイナスとなった。しかしその後は再び増加傾向にあり、2018年には約735億ドルとなっている。国別の傾向では長年アメリカからの直接投資額が最も多く、2018年には約268億ドルとなっている。ヨーロッパに関しては、特にEU 圏内各国からの直接投資額は企業の構造改革による拠点の移動などの影響を大きく受けるため、年度ごとの増減が変化しやすい状況である。オランダは引き揚げ超過の傾向が継続しているが、近年はスペインやイタリアからの投資が継続して行われ、2018年の投資額はそれぞれ約76億ドルと約31億ドルとなっている。
ドイツは環境先進国としても知られており、電気自動車の導入促進や、地球温暖化防止のための環境税(炭素税)の導入、包装物の回収・再利用することを義務付けた『包装廃棄物政令』の制定、経済界の自主規制など様々な方法で地球環境の保護を推進している。代表的な例として、2022年までに国内の原子力発電所をすべて閉鎖し、再生可能エネルギーなどで補っていくことや、再生可能エネルギーによる発電を買い取る仕組みを整備し、再生可能エネルギーへの投資を促したことなどがあげられる。また、発電時に発生する熱などを利用しエネルギー効率を高める熱併給発電などと呼称される技術の促進により、2020年に国全体のエネルギーの25%を賄うことを目標としている。
ドイツの貿易
ドイツ連邦統計局によると2019年のドイツの輸出額は約1兆3,300億ユーロに対し、輸入額は約1兆1,000億ユーロとなっており、2,000億ユーロ以上の貿易黒字を計上している。過去10年で輸出額、輸入額ともに増加しており、貿易黒字額は2014年以来継続して2,000億ユーロ以上となっている。
輸出
ドイツの2019年の主要な輸出品としては、自動車と工業機械がそれぞれ全体の輸出額の約17%と15%を占めており、次いで電子機器と化学品がともに約9%である。その他にも工業製品や化学製品が輸出額の大部分を占めている。
ドイツの近年の金額ベースでの輸出相手国はフランス、アメリカ、イギリス、オランダ、中国などが上位を占めている。2015年、2016年はこれらの国相手の輸出額が前年比で減少したものの、それ以降は増加傾向にある。2019年の輸出額の国別の構成比は、アメリカがトップで全体の9%、次いでフランスが8%、中国とオランダが7%、イギリスが6%となっている。近年の傾向として、中国への輸出が占める割合が増加傾向にあり、オランダ、イギリスを抜いて第三位の輸出相手国となっている。
輸入
ドイツの2019年の主要輸入品目の構成比は自動車が約12%、電子機器が約11%、その他商品が約10%、工業機械と化学品が約8%となっている。国別の輸入額の構成比では中国が約10%、オランダが約9%、アメリカが約7%、フランスが約6%、ポーランドとイタリアがともに約5%となっている。また、上位7か国以外からの輸入額の割合が約54%と過半数を超えている。輸入の場合も輸出と同様に2015年、2016年には上位5か国からの輸入が減少したものの、その後は増加傾向にある。輸入額の上位5か国の近年の傾向としては、中国とイタリアが全体に占める割合を増加させている一方で、オランダ、フランス、アメリカは全体に占める割合が横ばいか減少傾向にある。特にフランスのシェアは1.2%以上の下落となっている。ドイツの全体的な貿易の傾向として、EU圏内での貿易が全体の約60%を占めているが、特定の国に依存しすぎることなく、各国とバランス良く貿易を行い、安定した貿易黒字を計上している。
ドイツの対日輸出額は約200億ドル前後で安定して推移しており、対日輸出がドイツ全体の輸出に占める割合も約1.5%でほぼ変動はしていない。主要な対日輸出品としては消費財(対日輸出額の21%)、資本財(同19.2%)、輸送機器(同16.4%)、工業機械・電気機器(同11.1%)、化学品(同10.7%)などが挙げられる。ドイツの対日輸入額は2016年から増加傾向にあり、2018年には約300億ドルとなっている。対日輸入額がドイツ全体の輸入額に占める割合は対日輸出額の割合と比較してやや高いものの、おおむね2.2%前後となっている。主要な対日輸入品目には資本財(対日輸出額の28.8%)、工業機械・電気機器(同22.4%)、消費財(同12.5%)などである。
ドイツに進出した日系企業と在留邦人人口
ドイツの2018年の在留邦人数は45,416人で、イギリスに次ぎヨーロッパで2番目に在留邦人数が多い国である。近年、ドイツに住む邦人数は年々増加傾向にあったが、2018年は特にミュンヘン地域の邦人数が前年比5.8%の減少となったのが影響し、デュッセルドルフ(前年比0.2%増)やフランクフルト(同2.3%増)地域の邦人数の増加にもかかわらず、前年比0.8%の減少となった。
ドイツはヨーロッパで最も多くの日系企業が進出している国で、その拠点数は2018年に1,839拠点となっており、二番目に多いイギリスの966拠点を大きく上回っている。また、2012年の拠点数と比較して約1.2倍と近年その数を増加させている。
2017年時点でドイツへ進出している日系企業の業種別の内訳は、非製造業が最も多く1,151拠点で、次いで製造業が508拠点、建設業が7拠点、農業・林業が1拠点、分類不能・不明が147拠点となっており、2014年の業種別の拠点数と比較した場合、製造業と建設業は拠点数を減らしているのに対して、非製造業の拠点数は15%程度増加している。ドイツに進出している非製造業の主な業種は卸売・小売業であり、その割合は、非製造業の拠点数の50%近くを占めている。その他の非製造業の拠点数の比率は、宿泊・飲食業が11.4%、情報通信業8.7%、学術研究・技術・専門サービス業、運輸・郵便業がそれぞれ7・6%と6.6%となっている。
ドイツは世界有数の経済大国であり、自動車、電気・機械、化学産業を中心とした製造業の各分野において高い技術力を保有する企業が多く存在している。また、世界的にもレベルの高い地球環境保護政策を推進し、「環境先進国」として注目されている。これまでに多くの日系企業が進出している国であることからビジネス面での今後の可能性は十分にあると見込まれるが、ドイツは比較的安定した市場の為、今後、ドイツへの進出や現地企業との連携を目指す企業は入念なビジネスプランの設計が必要である。
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