タイのビジネスニュース:2025年2月前半

焼畑で採れたトウモロコシの輸入禁止を計画(2月2日)
商務省は、収穫後に焼畑が行われた農地からのトウモロコシの輸入を禁止するよう、内閣承認を求める予定であることを発表した。
この措置は、国境を越えたPM2.5による大気汚染問題を軽減することを目的としており、商務省の外国貿易局と民間部門の関係機関による
会議で、収穫後に焼畑が行われた農地からのトウモロコシの輸入を禁止することを原則的に合意している。これにより、輸入業者は、トウモロコシが収穫後に焼畑を行っていない農地で生産されたことを証明する証明書を取得し、トウモロコシ畑の正確な位置を示す地図を提出する必要がある。
タイは、年間400万~500万トンのトウモロコシを生産しているが、年間のトウモロコシ需要は800万~900万トンに及び、国内生産のみでは不足している状況である。昨年は、カンボジア、ラオス、ミャンマーから200万トンのトウモロコシを輸入しており、そのうちミャンマーからの輸入が87%を占め、次いでラオス(12.61%)、カンボジア(0.39%)となっている。
外国貿易局は、今後、焼畑を行わない輸出業者をリストアップし、近隣諸国に輸入禁止措置について通知していくとしている。
バンコクで「ジュラシックワールド」テーマパークを建設(2月6日)
投資委員会(BOI)は、観光促進のため、バンコクに新しいテーマパークとなる「ジュラシックワールド」の建設に関する投資プロジェクトを承認したことを発表した。
このプロジェクトは東南アジア初の試みであり、タイの大手財閥TCCグループ傘下のAsset World Corp(AWC)の子会社が推進しており、
2025年第2四半期にオープンする予定である。なお、同施設は、総投資額12億バーツのプロジェクトで、チャオプラヤー川沿いの「アジアティーク・ザ・リバーフロント」内の4,000平方メートルの敷地に建設される。
同施設は、映画「ジュラシックワールド」にインスピレーションを受け、リアルな恐竜ロボットの展示や映画の象徴的なセットの再現など、没入型のエンターテインメントを提供する。AWC社、Neon社、Universal Destinations & Experiences社が共同で開発を進め、ジュラシックシリーズの世界的な人気を活かして国内外の幅広い年齢層の観光客を誘致する方針である。
インフレ率が10ヶ月連続で上昇(2月7日)
貿易政策・戦略事務局(TPSO)は、1月のインフレ率が1.32%上昇し、10カ月連続の上昇となったことを発表した。
上昇の要因は燃料費と食品・飲料価格の高騰であり、食品・飲料部門では、特に生鮮果物、調理用食材、ノンアルコール飲料の価格が上昇した。燃料価格の高騰は、前年の価格水準が低かったことに起因しており、電気料金や航空運賃が値上がりした。
TPSOは、2月のインフレ率も1月と同水準になると予測しており、これはディーゼル価格の高止まりや観光部門の回復による航空運賃の上昇が影響している。また、長期にわたる干ばつにより、ココナッツなどの一部の作物の生産量が通常レベルに戻っていないため、価格が高止まりしており、第1四半期全体のインフレ率は1.1~1.2%になると予測されている。
これに対して政府は、生活費抑制策として、電気料金の引き下げやLPG価格の安定化を進めている。また、天候回復による農作物の増産で
生鮮野菜の価格は下落傾向にあることや、大手企業が政府の景気刺激策と連携したマーケティング活動を進めていることなどインフレの抑制に
向けた動きも見られている。
タイが医療・ウェルネスツーリズムを推進(2月8日)
保健当局は、医療・ウェルネスツーリズムを推進する政府の計画を全面的に支持していることを発表した。
医療・ウェルネスツーリズムは、海外で医療サービスや治療を受けるために旅行することを指し、今後、成長が期待されている市場である。タイ政府は第13次国家経済社会開発計画(2023~2027年)の一環として、医療ハブの構築を目指しており、GDPの1.7%を医療・ウェルネスツーリズムから生み出すことを目標としている。
現在、医療・ウェルネスツーリズムを目的としてタイを訪れる外国人観光客は、120万人から340万人へと増加しており、スパ部門も人気を
集めている。タイでは、2025年に「トップ・ウェルネス・グローバル・サミット(TWGS)」、「グローバル経済フォーラム」、「グローバル持続可能エネルギーフォーラム」の3つの国際イベントを開催する予定であり、タイ政府は、これらのイベントがタイの医療・ウェルネスツーリズムをさらに促進させることを期待している。
WHAUP社がデータセンター向け水供給拡大で収益増加を目指す(2月10日)
工業用地開発・運営大手のWHAの傘下で、電力・水道事業を手掛けるWHA Utilities and Power社は、2030年までに収益を350億バーツに
増やすことを目標に、特にデータセンター向けの水供給拡大に注力する方針を発表した。
同社は、WHA社が開発した工業団地内外の顧客へのサービス拡大によって、さらなる収益増加の可能性があるとみており、2025年は、
特に、データセンターを含むテクノロジー関連企業の需要増加に対応するため、WHAの工業団地内でのサービス拡大に重点を置くとしている。
データセンターは、システムの冷却に大量の水を必要としているため、同社は「付加価値の高い水」の提供を進めるとともに、新たな原水供給源の確保に取り組むとしており、政府の水道および廃水処理プロジェクトに参加することで、WHA工業団地内外への水事業の拡大を計画している。2025年には、2024年比4%増の1億7,300万立方メートルの水を国内外に販売する計画であり、このうち1億3,200万立方メートルはタイの顧客向けで、残りはベトナムに輸出するとしている。
タイの鉄鋼業界が10年間で1,000億バーツ超の収益損失を訴え(2月12日)
タイの鉄鋼業界は過去10年間で1,000億バーツ以上の収益を失っており、地元の鉄鋼メーカーは、その主な要因が経済の減速と安価な中国製鉄鋼製品の流入であると主張している。
収益の減少に伴い、国内の鉄鋼製造業の稼働率は30%未満に低下しており、多くの国内工場が閉鎖の危機に直面している。また、雇用維持のために一部の工場がライセンスを中国企業に売却する動きもあるが、これは違法行為であり、新たな雇用主の下で生産基準が遵守されているのかが懸念されている。
これに対して政府は、国内メーカーの既存設備の稼働率を向上させるために、5年間にわたり鉄鋼工場の新設を禁止する措置を講じたが、中国からの鉄鋼製品の流入は続いており、こうした対策は不十分だとみられている。一方、鉄鋼関連10団体は、政府に対し国内産業の保護を求めており、インド最大の製造業者の子会社であるTata Steel (Thailand)社とも協力して、この問題に対処しようとしている。
タイは現在、世界第5位の鉄鋼輸入国であり、国内生産量が年間600万トンであるのに対し、中国からは年間1,000万トン以上を輸入している。2024年のタイの鉄鋼総消費量は約1,500万~1,600万トンであり、2025年も同水準が見込まれている。マレーシアが国内鉄鋼業保護のために公民連携(PPP)プロジェクトにおいて国産鉄鋼の使用を推奨しているように、タイでも国内鉄鋼業を保護する為の強力な対策が求められて
いる。
マツダがタイでのEV生産に50億バーツを投資予定(2月13日)
マツダは、タイに50億バーツ(5,000万ドル)を投資し、電動コンパクトSUVの生産を行う計画を発表した。
同社は、この投資によって、タイ国内販売と日本やASEAN諸国などへの輸出を強化するとしており、年間10万台の生産を目標としている。
同社は、1995年にラヨーン県にオートアライアンス(AAT)工場を設立、2015年にエンジン生産のためチョンブリ県にマツダパワートレインマニュファクチャリングタイランド(MPMT)を設立しており、いずれの工場も自動車生産と国内販売用部品において重要拠点となっている。今回、新たに、50億バーツ以上の投資を実施することで、タイをEV産業の中心地として支援し、電気の力で走行するB-SUVの生産拠点にする
ことを目指している。
なお、この投資は、自動車組立部門全体と、エンジン、トランスミッション、バッテリーなどの主要部品の生産をカバーする予定で、2027年に生産を開始する予定であるとしている。
中小企業がデジタル投資を敬遠(2月14日)
タイ商工会議所大学(UTCC)の調査によると、中小企業(SME)の約92%が今年デジタル技術への投資を計画しておらず、投資を予定している企業は5.9%にとどまっていることを発表した。
同調査によると、中小企業のうちデジタル技術への投資を行っている企業の多くは観光業、国際貿易、製造業の分野である。約70%の企業は、DXが業務の効率化とコスト削減に寄与すると考えており、25.4%はデジタル技術導入による市場拡大や顧客アクセスの向上を期待しているが、実際に投資を計画している企業は少ない。3割以上の中小企業が投資の必要性を感じておらず、同様に3割程度の中小企業が財務上の制約を理由に投資を見送っている。
今回の調査に回答した6割程度の経営者が、2025年のタイ経済について、悪化すると予測している。観光業など一部の分野では成長が期待されているが、特に農業、製造業、国内貿易の分野で悲観的な見方が強い。
こうした動きに対してUTCCは、タイの中小企業は、経済の不透明さや資金不足を背景に、新技術やデジタル投資に慎重な姿勢を取っているとの見解を示している。