タイのビジネスニュース:2025年2月後半

物品税局が塩税ロードマップを策定中(2月18日)
物品税局は塩分を含む製品への課税、いわゆる塩税(ナトリウム税)のロードマップを策定していることを発表した。
この塩税は、栄養価が低いとされるスナック菓子から課税を開始する予定で、同局は現在、民間部門との協議でその実施に関する意見を収集している段階である。塩税の導入に際しては、既に徴収されている砂糖税の事例を参考に、民間部門に適応期間を設ける予定である。砂糖税の施行には、5年間にわたり民間との協議や適切な税率の検討が行われ、2017年に段階的に導入された。塩税も同様に、各製品に含まれるナトリウム量に基づいて課税される見込みである。なお初期段階では、スナック菓子などの必需品でない食品を対象とし、調味料やインスタントラーメンは現時点で対象外とされている。
また同局では、この塩税の導入を含め、税制改革を計画しており、その一環として、環境への負担軽減を目的にバッテリーなどの電池に関
する税制の再編も検討している。
商務省が国内の香水産業を推進(2月18日)
商務省は、国内の香水産業の成長を推進するため、地元の植物由来原料の活用、製造基準の向上、効果的なマーケティング戦略の実施を奨励している。
商務省貿易政策・戦略事務局(TPSO)によると、タイは芳香植物資源が豊富で、イランイラン(Cananga odorata)、ライティア アルボレア(Wrightia arborea)、パンダナス(Pandanus)、キンコウボク(Magnolia champaca)、沈香(Oud)などの香水の原料を供給できる
可能性があるため、今後、タイの香水産業が世界市場で大きく成長する見込みがあるとみている。
同局は、タイの香水産業の事業者に対して、タイ香水産業の競争力を高めるために、環境に優しい生産プロセスを採用しながら、タイの植物由来の香りを主なセールスポイントとする製品ブランドの開発に注力するよう促している。また同局は、芳香植物原料に関するISO 9235や国際香粧品香料協会(IFRA)が発行する認証などの国際基準を満たすために、抽出プロセスを改善することの重要性を強調している。
2024年のタイの香水市場は3億9,100万米ドルと評価されているが、消費者の購買力の向上と自己投資への関心の高まりによって、香水市場の成長が期待されており、今後は、年平均5.86%で成長し、2028年までに4億9,100万米ドルに達する可能性があると見込まれている。商務省は、タイの香水ビジネスがこれらの市場動向を活用し製品開発やマーケティング戦略を強化することで、その認知度と売上を効果的に高めることができると考えており、これらの取り組みを支援することで、タイの香水産業の発展を促進するとしている。
日産社がタイでのHEV生産に注力(2月18日)
日産自動車タイランド社は、ハイブリッド電気自動車(HEV)を中心とした新規投資を継続する一方で、生産コスト調整のため一部の自動車組立工場を閉鎖することを発表した。生産ラインを統合することで、固定費の最適化を図っている。
同社は、今後の事業方針について、サムットプラーカーン県の第1工場は組み立てを停止し、車体部品の製造と物流拠点に転換する一方、
2024年に設立された第2工場で組み立てを行うとしている。
同社は、BOI(タイ投資委員会)の投資奨励政策を活用し、HEV生産に関する物品税の減免措置を受ける計画であり、この税率によって、
2026年から2032年の7年間、CO2排出量に応じて税率が6~9%に引き下げられる。奨励措置を受けるには、2027年までに30億バーツ以上の
投資が必要であり、主要部品のタイ国内での生産が求められる。特に2026年以降は、HEVにタイ国内で生産したバッテリーを使用する必要が
ある。
同社は、以前から、タイにおけるHEV生産に重点を置く方針を明言しており、具体的な投資額は公表していないものの、投資奨励政策の減免措置の活用のため、30億バーツ以上を投資する見込みである。
2025年の高級車販売は横ばいの見込み(2月19日)
BMW Thailand社は、タイの高級車の販売が、消費者の購買力の低下と自動車ローンの取得の困難さから、2025年も横ばいになると見込んでいる。
同社によると、2024年にタイ国内で新規登録された高級車の台数は前年から24%減少し、30,000台強となった。同社のタイでの総販売台数も、前年比11.7%減の13,659台となったが、BMW・MINIブランドのバッテリー電気自動車(BEV)の販売台数は10.7%増の1,776台となった。なお、同社は、これに対して、タイの経済成長の鈍化と高水準の家計債務により、銀行や自動車金融会社が融資基準を厳格化したことで、国内の自動車販売が大幅に落ち込んだとみている。
一方で、2025年は、政府が導入した債務救済制度(You Fight, We Help)により、融資基準の厳格化が緩和されることを期待しており、
BMWは、タイへの投資を継続する意向である。この債務者救済制度は、最長1年間の延滞債務を抱える借り手が利用できる制度であり、500万バーツまでの住宅ローン、80万バーツまでの自動車ローン、500万バーツまでの中小企業向けローンを対象としている。
同社は、タイへの投資に注力しており、今後は、ラヨーンにバッテリー工場を建設し、国内・輸出向けのBEVやプラグインハイブリッドEVの生産を計画している。また、これまでマレーシアから輸入されていたMINIカントリーマンの組み立てもラヨーン工場で開始するとしている。
Banpu子会社が米国テキサスに炭素回収貯蔵施設を設置(2月21日)
タイの石炭採掘・生産大手企業のBanpu社の子会社で天然ガス事業を手がけるBKV社は、米国テキサス州フリーア市近郊のイーグルフォードシェールのガス生産プラントの近くに新たなCCS施設(炭素回収貯蔵施設)を開発中であることを発表した。
同施設は、BKV社が、中流エネルギー企業と連携し、持続可能性を追求する戦略の一環であり、現状、CCS施設の共同開発を計画しているが、投資予算や事業パートナーなどのプロジェクトの詳細は明らかにしていない。
同施設は、必要な許可がすべて取得されれば、2026年第1四半期に商業運転を開始する予定であり、承認に向けて、米国環境保護庁に監視、報告、検証計画を提出している。また、CCSにおいては、ガス生産プラントから排出されるCO2を購入する計画で、回収されたCO2は圧縮された後、炭素回収貯蔵プロジェクトの一環として建設された近隣の井戸に永久的に貯蔵される。これにより、年間約90,000トンのCO2が回収可能となると予想されている。
Banpu社は、2025~2030年までの投資を支援するために30億米ドル相当の予算を割り当てており、資金の最大60%は、ガス事業とCCSプロジェクトに充てるとしている。
バンコクオフィス市場は供給過剰で回復には数年かかる見込み(2月25日)
世界最大の総合不動産サービス会社であるCushman&Wakefield社は、バンコクのオフィス市場で供給過剰が続いているため、需要と供給のバランスが取れるまでに少なくとも5年はかかると見込んでいる。
バンコクのオフィス市場は供給過剰が続いており、これにより、一部の新規プロジェクトの建設が遅れ、新規参入のプロジェクト間での価格競争が激化している。建設が延期となったプロジェクトは、主に大規模開発で、賃貸可能面積は合計で20万平方メートル以上であった。また、供給過剰による新規テナントの誘致と既存テナントの維持をめぐる価格競争の激化により、過去2年間に完成した新規プロジェクトは最大30%の値引き(健全な市場での値引きは通常10~15%)となっている。
2024年末時点でのバンコクのオフィス供給量は約878万平方メートルで、空室率は27%となっている。これは、1997年の金融危機後の36%以来の高水準であり、2025~2027年に中心業務地区(CBD)エリアに約387,000平方メートルのオフィスが完成予定であるため、供給過剰はさらに進むと予想されている。
同社は、バンコクのオフィス市場が均衡した状態に戻るのは2030年頃で、その時期までに空室率は 15~20%に低下すると予想している。
タイの輸出が7か月連続で成長(2月26日)
商務省は、タイの輸出が7か月連続で成長し、2025年1月には前年同月比13.6%増の253億米ドルに達したことを発表した。
輸入に関しても前年比7.9%増の276億ドルとなり、貿易赤字は18億8,000万ドルとなった。貿易政策・戦略事務局(TPSO)によると、金、石油関連製品、武器を除く輸出は前年比11.4%増加している。この成長は、貿易相手国の経済拡大、目標水準でのインフレの安定、製造業の
活発化によるものである。
分野別に見ると、農工業製品の輸出は前年比3%増加したのに対し、農産物の出荷は2.2%減少した。その他、ゴムは45.5%増、小麦製品・
加工食品は19.5%増、缶詰・加工果物は13.4%増、ペットフードは13%増、鶏肉関連製品は12.3%増、缶詰・加工魚介類は11.8%増と好調
だった一方で、米や果物、タピオカ製品、飲料、缶詰・加工野菜などは減少した。
工業製品の輸出は前年比で17%増加しており、コンピューターや部品、金以外の宝石・宝飾品、ゴム製品、機械・機械部品、空調システム・部品などが工業品分野の輸出増に貢献している。対して、自動車・自動車部品、鉄鋼製品、通信機器、化粧品・スキンケア用品、半導体関連
部品などは減少した。
同局は、貿易相手国が米国の貿易政策に関する不確実性を軽減するために輸入を増やしていることや、米国が中国からの輸入依存を減らそうとしていることから、第1四半期も輸出が7~10%増加すると予想している。
商務省が空気清浄機と掃除機の価格統制リストへの追加を検討(2月27日)
商務省は、空気清浄機と掃除機を価格統制リストに追加することを提案していると発表した。これは、PM2.5問題に対する消費者の関心の高まりにより、これらの製品の需要が急増しているためである。
同提案は、商品およびサービス価格委員会で議論され、承認されればメーカーや販売業者には生産量や販売価格の報告義務が課される。これにより価格透明性を確保し、不当な値上げを防ぐ狙いがある。
価格統制リストに製品を追加する基準には、日常使用に不可欠であること、生産者または販売者の数が限られていること、市場競争が不十分であること、価格が不安定であること、および供給不足が懸念さることが含まれる。
空気清浄機と掃除機についても、PM2.5問題の深刻化前は販売が低迷し、割引販売が行われていたが、需要増加により通常価格へ戻っている。現在、供給不足はないが、一時的な在庫切れなどが発生している状況であり、統制品目の選定基準を満たすと判断された。
内閣は、2025年6月までに57の規制対象製品・サービス(52の製品と5つのサービス) を承認しており、2023年には5品目、2024年には砂糖が追加された。今回の提案が承認されることで、統制品目は合計59品目(54製品と5サービス)になるとしている。