タイのビジネスニュース:2025年1月後半

三菱電機の販売代理店がタイのエアコン市場に注目(1月16日)
三菱電機の現地代理店Mitsubishi Electric Kang Yong Watana社は、住宅部門の回復とデータセンター産業の拡大を背景に、タイの空調市場における成長機会を見込んでいる。
昨年、同社はルームエアコン、換気扇、ウォーターポンプの市場で最大のシェアを獲得した。2025年度は、ブランド価値の構築に注力し、
BtoCとBtoBの両セグメントに合わせた革新的な製品の発売に取組んでいく。タイの空調市場は、前年比5%増の335億バーツに達すると予測しており、同社はこの市場で30%以上のシェア獲得を目指している。
タイのルームエアコン市場は、住宅市場の回復と省エネ家電の需要増加により、2025年には前年比約5%の成長が見込まれており、この傾向により、消費者は既存のエアコンシステムを新しい省エネモデルに更新するようになると同社は見込んでいる。
法人向け分野では、タイ国内でのデータセンター需要の増加に伴い、データセンター向けの空調ニーズに対応する製品を開発している。この他、VRFシステム、商業用チラー、ビル管理システムなどの製品ラインを拡充し、病院、教育機関、工場、データセンターなどの多様なニーズに対応している。また、同社は、2025年度のマーケティング・ブランディング活動に12億バーツを投資する予定である。
今後、同社は価格競争ではなく、製品の機能・高品質性を売り出していく方針で、アフターサービスの提供にも注力していくことで、タイ
空調市場での地位を強化し、更なる成長を目指すとしている。
タイ証券取引所がカーボンフットプリント情報を計算する新プラットフォームを立ち上げ(1月18日)
タイ証券取引所(SET)は、GHGデータ管理プラットフォーム「SET Carbon」を開発したことを発表した。このプラットフォームは、企業がカーボンフットプリント情報を効果的に管理・報告するためのツールであり、GHG排出量の可視化を通じてSDGs戦略の策定を支援する。
SET Carbonは、気候変動環境局(CCE)とタイ輸出入銀行(EXIM Bank)、SETが協力し、開発されたものである。同システムにより、従来のGHG報告システムを3機関のデータと連携させることが可能となるため、業務の重複を削減し、正確性と信頼性を高めたツールになっている。同システムは、2025年1月16日から企業が利用可能となっており、データの一元管理を通じて、グリーン資本へのアクセス向上を目指している。
近年、持続可能な投資への関心が高まっており、ESGに関連するファンドや格付けの需要が増加している。欧州市場では、輸出入における
カーボンフットプリントの重要性が増しており、準備なしで欧州に輸出すると、トン当たり80ドル以上のカーボンクレジットを購入しなければならない。こうした動きに対して、SETでは、タイ企業が国際基準に沿った情報を提供し、資金調達の機会を拡大できるよう支援している。
SETは、過去15年以上にわたり、持続可能性に関する知識の普及やESG格付けの導入等、企業の持続可能な成長を支援してきた。証券取引所は、今回の「SET Carbon」の導入により、タイ企業のGHG排出量の測定と報告を強化し、将来の競争力と持続可能な社会の実現に寄与することが期待されている。
タイが公益事業グリーン料金(UGT)を導入(1月24日)
タイ政府は初めて「ユーティリティ・グリーン・タリフ(公益事業グリーン料金)」(以下、UGT)を導入し、再生可能エネルギー電力を
希望する事業者へ関税を課した。
UGTは、中規模・大規模事業者や特定事業者を対象とした未特定の供給源(太陽光や水力等)による再エネ電源UGT1と、特定の供給源による再エネ電源UGT2に分かれている。
UGT1を希望する事業者は、1キロワット時あたり4.21バーツの料金が課されており、一般的な電力料金である4.15 バーツより 0.06 バーツ高く設定されている。なお、同料金は、CO2排出量を削減するキャンペーンを実施する企業を対象としており、家庭向けではない。
再生可能エネルギーを4.21バーツで購入したい事業者は、タイ発電公社(EGAT)、首都圏電力公社(MEA)、または地方電力公社(PEA)と1年間の電力購入契約を締結する必要がある。既に、エネルギー当局は、4月までに20億ユニットの再生可能エネルギー電力を販売する準備を
進めている。
これらの電力機関は、1/2~2/28までの期間で、クリーン電力の購入を希望する企業の登録を受け付けており、既に、電子・化学・石油
化学・ショッピングモール・金融企業などから、6億ユニットの再生可能エネルギーの購入希望が提出されている。
UGTの導入により、タイ企業のCO2排出削減を促進し、持続可能なエネルギー利用の拡大が期待されている。
観光・スポーツ省が中小規模のホテルに特化した新しいホテル法案を提案(1月27日)
観光・スポーツ省は、新たなホテル法案の策定の目指すことを発表した。新しいホテル法案では、中小規模の未登録宿泊施設が登録可能と
なるよう、いくつかの規制が緩和される予定であるが、安全性は最優先事項として維持される。そのため、ホテル経営者は、新たな基準に適合するよう、施設の改善が求められる。同省によると、現在、タイには現行のホテル法基準を満たさない中小規模の宿泊施設が9万軒以上ある。
同庁と内務省が提案するこの新法案は、4月の内閣会議での議論が予定されているが、現在200以上の法案が審議待ちの状態である。タイ
ホテル協会(THA)の会長によると、宿泊施設の登録基準の規制緩和には前向きである反面、主な問題は現行のホテル法ではなく、環境法や
都市計画法にあると指摘しており、多くのホテルやゲストハウスは、これらの法律の制約により登録が困難であるとしている。
例えば、タイ南部では環境影響評価のため小規模ゲストハウスの一部が登録できず、北部では都市計画法の規制を受ける事業者が見られて
いる。タイ政府は、各分野の問題を解決するために省庁の規制を整備すべきとしており、これらの新たな取組により、タイの宿泊業界の透明性と安全性が向上し、観光産業の持続可能な発展が期待されている。
企業登録数が前年比で4%増加(1月28日)
タイ商務省の事業開発局(DBD)は、今年の新規事業登録数が前年比で2~4%増加し、9万~9万5千社に達すると予測していることを発表した。特に、ライフスタイル、イノベーション、ビジネスマネジメント関連が有望な分野とされている。
2024年の新規事業登録数は、前年比2.69%増の87,596件となり、登録資本金総額は、前年比49.2%減の2,850億バーツであった。2024年の事業登録と閉鎖に関する全体的な統計は、ハイシーズン中の観光産業の回復などの要因により、引き続き良好であった。海外からの観光客の
増加は、雇用率の上昇に貢献した。
同局は、成長の可能性が期待できる企業を分析し、注目すべき有望なビジネスを特定するためのデータをまとめた。
今年最も有望なビジネスは、ライフスタイルや心身の健康に重点を置いたビジネスである。これには、観光および家族向けアクティビティ
ビジネス、健康とウェルネスビジネス、ペット関連ビジネス、スピリチュアルビジネス、映画制作ビジネス、建物の改修および装飾ビジネスが含まれる。
また、データセンター、ソフトウェア、電子商取引など、イノベーションとテクノロジーに関わる分野も増加している。さらに、会計事務所、法律事務所、アウトソーシングサービス、環境コンサルティング事業など、経営管理に関連する企業も有望な企業であるとしている。
タイ工業連盟が今年の自動車生産目標を150万台に維持(1月29日)
タイ工業連盟(FTI)は、2025年の自動車生産目標を150万台に据え置く方針であることを発表した。なお、この生産目標は、輸出向けに100万台、国内市場向けに50万台となっている。しかし、高水準な家計債務、購買力の低下、厳しい融資条件などが業界にとって課題となる見通しである。
2024年のタイの自動車生産台数は146万台で、目標の150万台を下回った。輸出向け生産台数は前年比12.1%減の100万台、国内市場向け
生産台数は33.1%減の459,856台となった。国内の自動車販売台数は前年比26.2%減の572,675台で、14年ぶりの低水準を記録した。この減少は、経済の減速、金融機関による融資拒否率の高さ、家計債務の増加によるものである。
FTIは、政府がさらなる景気刺激策を導入し、消費者の信頼感を高めることで、今年の国内自動車販売が回復することを期待している。
タイ政府が中国と結ぶ同国初の高速鉄道網を2030年に完成を目指す(1月29日)
タイ政府は、ラオスを経由して中国と結ぶ同国初の高速鉄道網を2030年までに完成させることを発表した。このプロジェクトは長らく遅延していたが、両国間の関係強化と貿易促進の鍵として注目されている。
現在、バンコクとナコンラチャシマ県を結ぶ第1期工事が約36%完了している。第2期では、鉄道を北東部国境のノンカーイ県まで延長する
計画で、設計が完成し、内閣の承認待ちである。
鉄道の総延長は609キロメートル(378マイル)で、総工費は約4,340億バーツ(29億米ドル)と推定されている。タイの鉄道網はメコン川に架かる橋を介してラオス・中国線に接続される予定である。
タイは、最大の貿易相手国である中国との連携強化を目指しており、特に経済成長の面で地域諸国に後れを取らないよう努めている。また、経済面だけでなく、観光分野でも関係を深めており、昨年には両国民の観光ビザを免除する措置を導入した。
タイとラオスを結ぶ鉄道網が開通すれば、バンコクからラオスの首都ビエンチャン、中国南部の昆明を経由し、北京まで鉄道で移動できる
ようになり、地域間の結びつきが一層強化されると期待されている。
TikTokがデータホスティングサービスに1270億バーツを投資(1月29日)
タイ投資委員会(BOI)は、TikTokがデータセンター(データホスティングサービス)に1,270億バーツ(38億ドル)を投資すると発表した。
新しいデータセンターは、電子商取引への進出も成功させている世界的に人気の動画サイトと提携している企業の活動をサポートすることを目的としており、2026年の運用開始を目指している。なおこの投資は、中国に拠点を置くTikTokの親会社ByteDance社のシンガポール支社に
よって行われている。
この動きは、タイにおけるデータセンター構築の最新事例であり、世界的テック企業大手も同様の計画を進めている。例えばGoogleは、
昨年、タイ東部のチョンブリ県に10億ドルのデータハブを設立する計画を発表した。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、その1年前、
タイ国内のクラウドサービス事業に今後15年間で50億ドルを投資する方針を示している。さらに、Microsoftもタイ国内に初の地域データ
センターを開設する予定である。
タイ投資委員会事務局長は、TikTokの計画について、「タイのデジタルおよびAIインフラを強化する上で重要な一歩となり、地域のハブとなるという国の目標に近づく」との見解を示している。さらに、マッコーリー・エクイティ・リサーチは、タイが世界のデータセンターブームにおいて「次のフロンティア」になる可能性が高いとの見解を示している。
タイは豊富な電力供給と安定した送電網を強みとしており、データセンター事業者にとって魅力的な市場となっている。今回の投資は、タイのデジタルインフラの強化と地域的な技術ハブとしての地位確立に寄与すると期待されている。
タイ外国貿易局がトウモロコシ政策管理委員会に越境PM2.5対策を提案(1月31日)
タイ商務省外国貿易局(DFT)は、大気汚染問題への対応として、トウモロコシ政策管理委員会にトウモロコシ輸入に関する新規制(越境PM2.5防止対策)を提案する方針を発表した。
この提案では、トウモロコシ輸入業者に、輸出国の当局が発行する証明書の提出を義務づける。同証明書は、輸入トウモロコシが焼畑農業ではない地域で生産されたことを証明するもので、追跡可能なシステムと栽培地を示す地図が添付される予定である。これらの要件を満たさない場合、輸入制限の対象となる。
DFTは、焼畑農業によるトウモロコシの生産がPM2.5汚染の一因になっていると指摘しており、これらの措置の重要性を強調している。DFTは、関連機関と協議を行った後、最終的な提案をトウモロコシ政策管理委員会荷提出する予定である。なお、この提案は、世界貿易機関の原則やASEANの義務、自由貿易協定に沿って、すべての国に適用される。
タイ政府は、PM2.5汚染対策として、国内外からの汚染物質の流入を防ぐための取組を強化しており、特に、農業分野における焼畑農業の
慣行が大気汚染に寄与していることから輸入規制を通じて、その影響を抑制しようとしている。これらの措置はタイ国内の大気質改善と国民の健康保護に寄与すると期待されており、同省はヤンゴンの貿易当局と協力し、非焼却慣行に従うミャンマーのトウモロコシ輸出業者のリストを作成する予定である。
LG Electronics (Thailand) 社がタイの電気製品市場の5%成長を予測
LG Electronics (Thailand) 社は、2025年のタイの電化製品市場が2024年の828億バーツから5%増加し、870億バーツに達すると予測していることを発表した。
タイの電化製品市場は、主に洗濯機、テレビ、冷蔵庫、エアコンで構成されている。このうち、エアコン市場の成長は、観光業や不動産業の活性化、新規開発やリノベーションによって促進されると見込まれている。
同社は、「Future Vision 2030」に沿った新たな組織構造を導入し、ホームアプライアンス(洗濯機、冷蔵庫)、メディアエンターテインメント(テレビ、モニター)、エコソリューション(専門的な暖房、換気、空調システム)、ビークルソリューションの4つの主要部門を強化している。
さらに、同社は、B2Bセグメントの割合を11%から15%に拡大することを目指している。この成長は、商業セグメント向けのディスプレイやHVACシステムによって推進されると予想される。一方で、同社は「LG.com」のオンラインプラットフォームを通じた消費者向け直販市場を
強化し、さまざまなプラットフォームでのオンライン小売事業の存在感を強化することを目指している。これによるオンライン販売の割合は、現在の7%から15%へと増加すると予測されている。