タイのニュース&トピックス:2024年10月後半
工業用地の販売またはリースが増加(10月22日)
不動産コンサル系のKnight Frank Thailandによると、2024年上半期には全国で8,063ライ(1ライ=1,600平方メートル)の工業用地が販売またはリースされ、2023年下半期と比較して53%増加している。需要の急増と新規供給の微増により、2024年上半期の累計販売率は86.9%となり、前期比で3.9%上昇した。
2024年上半期の工業用地市場は全体的に成長し、新規供給、土地販売、販売率、販売価格が増加した。これは主に東部3県(チョンブリ、
ラヨーン、チャチュンサオ)の経済特区である東部経済回廊(以下、EEC)の需要によるものである。
主な推進力となったのは、政府の補助金に支えられている戦略的な経済特区であるEECでの需要の高まりで、同特区では4,869ライの土地が
取引され、全国の総取引の60%を占めた。
全国の工業用地の平均価格は、2023年下半期の1ライあたり600万バーツから1.6%上昇して、1ライあたり620万バーツとなった。最も高い平均価格はバンコク首都圏で記録され、1ライあたり1,110万バーツで、2.2%の増加を記録した。最高価格はサムットプラカン県のジェモポリス工業団地で記録され、1ライあたり1,600万バーツに達した。
これらの工業用地市場の成長の大部分は外国直接投資によるもので、プロジェクトの6割弱、投資額の7割強を占めている。最も多くの投資を集めたのは、電気・電子機器部門で全170件のプロジェクトで1,390億バーツ相当の投資が行われたとしている。
新国家エネルギー計画で2.9兆バーツの設備投資を計画(10月17日)
タイ初の本格的なクリーンエネルギー推進ガイドラインとなる「新国家エネルギー計画(以下、NEP)」は、今後13年間で2兆9,000億バーツの設備投資を実施する計画で、CO2削減に向けて、太陽光エネルギーが重要な要素となるとしている。
今年から2037年まで施行される予定の2024年版NEPは、電力開発計画、石油計画、ガス計画、代替エネルギー計画、エネルギー効率計画で構成されている。なかでも、再生可能エネルギー開発と化石燃料発電所への投資は、資金の大部分となる1兆5,200億バーツを占めている。
電力開発計画によると、石炭・ガスの比率は2024年時点の約80%から2037年までに燃料使用量全体の48%に削減する予定であり、再生可能エネルギー比率は2023年末の20%から51%に増加する計画である。
再生可能エネルギー分野では、太陽光発電の開発が加速する見込みで、その発電能力は少なくとも1,000メガワットに達すると見込まれて
いる。NEPによるプロジェクト以外にも太陽光の開発が進んでおり、例えば、タイ電力公社のEGATでは、浮体式の太陽光パネルを開発中で
あり、2025~2029年にかけて、全国の貯水池に2,700メガワットの容量を持つ浮体式太陽光発電所を設置する計画である。
バンチャック社がSAF生産用の使用済み食用油の調達に向けCPF社と契約を締結(10月29日)
エネルギー複合企業バンチャック・コーポレーション(以下、バンチャック)は、持続可能な航空燃料(以下、SAF)を生産するため、さまざまなレストランブランドを運営するチャロン・ポカパン・フーズ(以下、CPF)と提携し、同社から使用済み食用油を調達することを発表した。
バンチャクとCPFは、CPFの食品製造工場から排出される使用済み食用油や各種油脂(CPFの廃水処理施設や関連会社から出る油脂を含む)を共同で管理し、バンチャクの子会社でSAF生産・流通を担うBSGF社を通じてSAFを生産する。これにより、SAF生産に使用する使用済み食用油の最大60%が国内で調達され、残り40%が輸入される。また、バンコクのSAF工場の建設は既に70%程度完了しており、2025年第2四半期には稼働を開始する予定である。なお、同工場の生産能力は、1日当たり100万リットルとしている。
バイオ燃料であるSAFは、従来のジェット燃料に比べて温室効果ガスの排出量が最大80%少ないと言われており、同取組によって使用済みの食用油や脂肪をSAFの原料として使用することで、不要になった材料に価値を付加して再び使えるようにする循環型経済発展を推進する政府の取り組みを支援するものとなるとしている。
NOK社の子会社であるMektec Manufacturing(Thailand)社がプリント基板事業に投資(10月28日)
日本最大のプリント基板メーカーであるNOK社の子会社であるMektec Manufacturing(Thailand)社が、電気自動車の需要増加に対応し、電気自動車用電池などで使用されるフレキシブル基板の生産を増やすために、9億2,000万バーツを投資したことを発表した。
プリント基板は、電気自動車、スマート家電、通信機器、医療機器など、ほとんどの電子製品に使用されており、タイはプリント基板製造行の新たな投資先になりつつある。
NOK社は、複雑な設計やスペース・重量制限がある製品に使用されるフレキシブル基板 の製造を専門としており、1995年にフレキシブル
基板の製造を開始して以来、58億バーツ以上の投資奨励金をタイ投資委員会(BOI)から付与されている。
同社は、タイのプリント基板製造業が、5G無線技術・IoT機器・人工知能(AI)ロボットの成長に牽引され、今後も成長し続けるとの見解を示しており、今後も事業への投資を継続するとしている。
Equinix社がタイのデータセンターに5億ドルを投資(10月30日)
米国を拠点とするクラウドサービスプロバイダーのEquinix社は、CLMVT(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム)の顧客からの高まる需要に応えるため、今後10年間でタイのデータセンター開発に5億ドルを投資すると発表した。
同社がタイを新たなデータセンターの建設地に選んだのは、複数の地元企業のデジタル変革や、人工知能技術の成長、クラウドサービスの
利用を促進し海外のクラウドサービスプロバイダーからの投資を呼び込むクラウド政策によるものである。また、タイのデジタルインフラと
高いインターネット普及率もデータセンターの発展を支えている。
Equinixは、企業がデータセンター施設内の物理的なスペースを借りて、ストレージシステムなどの自社のIT機器を収容できるコロケーションサービスを提供しており、世界72カ国で260のデータセンターを運営している。
同社のタイへの事業拡大によりタイのデジタルインフラがさらに強化されることが見込まれる。
SCGパッケージング社が収益目標が未達で終わる予測(10月30日)
タイの素材最大手サイアム・セメント(SCG)傘下の包装材大手SCGパッケージング社(SCGP)は、世界的な経済不安とバーツ高の影響で、今年の売上高目標1,500億バーツを未達で終わる見込みであると発表した。
タイの輸出に影響を与えるバーツ高と中国の景気減速により、2024年の収益見通しは不振となった。その他の国際経済上の課題として、地政学的紛争、米中貿易戦争、米国大統領選挙なども影響を与えている。
同社は1月から9月までで、投資プロジェクトの支援に270億バーツを費やしており、今年末までに投資予算支出が300億バーツに達する見込みである。また、このうち130億バーツを、2025年に成長可能性が高い事業への投資や生産効率や保守管理の改善などのプロジェクト支援に
割り充てる計画である。
同社の売上状況は、統合包装・繊維事業の売上増加により、2024年1~9月で前年比4%増の1,020億バーツの収益を計上した。この期間の
利益は、営業コストの増加により、前年比 7% 減の37.5 億バーツとなった。
同社は、世界的に経済環境が不透明であるが、今後、消費財への支出が増加する見解を示しており、これにより包装業界は今年第4四半期に
改善すると見込んでいる。また、今年後半のホリデーシーズンにはサービスおよび観光部門が回復することで、耐久消費財の需要も高まると
見込んでいる。
バンコクの住宅市場は景気低迷で下落傾向(10月25日)
サイアム商業銀行(SCB)の研究センターであるSCB EICは、タイの経済低迷により、バンコク首都圏の新規住宅ユニットの販売は今年10%減少し、2025年にはさらに1~3%減少すると予測している。住宅価値に関しては、2024年は9%の減少が見込まれているが、来年は0~2%に落ち着く可能性があるとの見解である。
住宅市場の低迷は、生活費の上昇、購買力の低下、家計債務の高水準、金利の上昇、住宅ローン承認基準の厳格化など、経済的な課題に起因している。これらの要因により、特に低所得層から中所得層の住宅購入希望者は、購入の決定を先延ばしにしている傾向がある。さらに同研究センターは、2024年に新規に発売される住宅ユニット数は前年比 28% 減少し、2025年には2~4%の縮小が見込まれると予測している。
こうした状況に対応して、不動産開発業者は購買力が強い中級から上級の市場プロジェクトに注力するようになっている。大手銀行によると、住宅ローンの承認手続きの厳格化によって住宅ローン契約数も減少しており、こうした市況に対して、住宅ローンに適用される貸出金利の全面的な引き下げを発表している。タイ最大の銀行であるバンコク銀行では、最も低い年7%の金利を提供しており、その他の銀行についても、11月1日より貸出金利の引き下げを実施するとしている。