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独自の歴史を背景に発展するドイツのネット通販


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「閉店法」により発展したドイツの通信販売

 ドイツは以前からヨーロッパの中でも通信販売の利用が盛んな国だ。その要因の一つが市民生活を不便にするものとして悪評も多い「閉店法」の存在であると言われている。
 「閉店法」とは、1956年に制定された小売店の閉店時間を規制するドイツ連邦法である。当時、ドイツ(西ドイツ)で強い発言力を持っていた労働組合の圧力を背景として、小売業で就業する労働者を週末と夜間の労働から解放するとともに、統一的な規制をすることで不公正な競争を防止することを目的に制定されたものであり、日曜日・祝日の小売店の営業を原則として禁止するとともに、営業日の営業時間も厳しく制限していた。
 この法律によって、ドイツ市民の消費生活は当然のことながら不便なものとなっていた。この不便を解消する手段として普及したのが、時間の制限なく利用できる通信販売であり、Otto (オットー)などの通販企業が同法の制定後、急成長を遂げた。
 なお、近年では「閉店法」は緩和の方向にあり、多くの州で営業時間の延長や24時間営業が認められるようになったが、現状でも日曜日・祝日はほとんどの小売店が閉店している。

ブロードバンドの普及によりストレスなくネット通販を楽しめる環境が整う

 ドイツにおける通信販売は日本と同様、従来は紙媒体のカタログなどによるものが中心であったが、インターネットの普及に伴い、近年ではネット通販が主流となっている。ちなみにドイツのインターネット普及率は2015年時点で87.6%(日本は93.3%。ITU=国際電気通信連合調べ)。ドイツ連邦政府は、2009年2月に発表した全国ブロードバンド網整備計画で2018年までに50Mbps以上のブロードバンド・サービスを全世帯で利用可能とする目標を掲げており、連邦運輸デジタルインフラストラクチャー省(BMVI)の発表によれば、すでに2015年半ばには50Mbps以上のブロードバンド・サービスが利用可能な世帯の割合が68.7%に達したとのことだ。つまり、ドイツでは多くの世帯で、ストレスなくネット通販を楽しめる環境が整っているのだ。

ドイツでもネット通販の中心はAmazon

 現在、ドイツのネット通販の中で大きな勢力を誇っているのは、日本でもおなじみのAmazon(アマゾン)だ。また、ドイツ発祥のOtto Group(オットーグループ)も健闘しており、B2Cファッションとライフスタイルの分野ではEC内でも有数のネット通販企業となっている。その他、カジュアルファッションを中心に扱うzalando(ツァランド)、電化製品通販のalternatee(アルタネイト)、雑貨通販のtchibo(チボ)なども多くの顧客を集めているようだ。
 なお、配送については1995年に日本に先駆けて民営化されたDeutsche Post AG(ドイツポスト)傘下のDHL、Otto Groupグループ内のドイツ最大の独立系宅配業者Hermes Groupなどが担っているが、いずれにしても日本の宅配便業者のような親切さ、きめ細かさはなく、利用者が不便を強いられるケースも多いようだ。
 また、決済についてはクレジットカード、デビットカード、ペイパル(PayPal)などによる電子的な決済の利用が一般的であるが、ドイツでは伝統的にクレジットカード決済に抵抗感を持つ人も少なくないため、請求書による後払いに対応するネット通販事業者も少なくない状況である。

顧客に返品を推奨することで満足度を高め、リピートオーダーを促進

 ドイツではEU規定に基づく国内法により、クーリングオフ期間が設定されており、ネット通販利用者は、一部の商品などを除き、商品到着から原則14日間、特に理由を示すことなく返品を行うことが可能だ。
 ドイツではカタログ通販が主流であった時代から、日本の通販と比較して返品率が格段に高いことが指摘されていた。これは合理性を重視するドイツの国民性を反映するものと言われており、特に衣服や靴などについては、いくつかのサイズ・カラーの商品を注文し、気に入ったもの以外は返品するということが一般化していた。このような状況はネット通販が主流となった現在でも大きく変わらないようであり、ネット通販事業者の収益性向上を妨げる要因の一つになっている。しかし、前出のzalandoなどではこれを逆手に取り、法定のクーリングオフ期間を大きく上回る100日間の無条件・無料返品期間を設定。さらに、送り主および宛先記載済みのシールを品に添え、このシールによって送付されてきた箱を使って返品できるようにするなど、顧客に返品を積極的に推奨することで満足度を高め、リピートオーダーを促進し、業績向上を実現している。

(2017年2月)



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