家は一生に一度の買物にあらず-カナダの住宅事情
築年数を重ねても価格が低下しないカナダの住宅
日本では、住宅購入は一生に一度という人が多い。近年、都市部を中心にライフスタイルに合わせてマイホームを何度も買い換えるという人も増えつつあるようだが、現状では少数派であり、特にサラリーマンでは、住宅購入のためにコツコツと頭金を貯めた上で、吟味に吟味を重ねて“終の棲家”を購入。30~35年の長期に渡って住宅ローンを払い続け、定年退職時に退職金で残りのローンを完済して、一生住み続けるといったかたちが、まだまだ多いようだ。
カナダでは大きく状況が異なり、家族構成や財政状況の変化に応じて数年単位で住み替えるというスタイルが一般的だ。このようなスタイルが一般化する背景としては、カナダでは、住宅の価格が新築時から低下せず、時には上昇することが挙げられる。築年数を重ねると住宅の資産価値=価格が低下していくため、買い替えに多額の追加費用が必要となるケースが多い日本では、住宅は文字通り“不動産”だが、カナダにおける住宅は流動性の高い資産なのだ。
カナダは世界の森林面積の約10%を有する森林資源大国であり、木材価格も低水準に抑えられていることから、住宅については伝統的な木造一戸建てが一般的であるが、バンクーバーなどの大都市では鉄筋コンクリート造の分譲マンションなども数多く存在する。また、賃貸物件も少なくないが、家賃相場が上昇傾向にあるので、住宅に費やす総コストを考慮して、ローン審査にさえ通れば購入するという人が多いようだ。
ローンを組むことができる金額を見極めた上で、購入可能な物件を探索
日本の住宅購入においては新築志向が強いが、カナダでは住み替えが一般的である中で中古物件の流通量が多いからか、中古住宅を不動産エージェントの仲介で購入するかたちが一般的だ。ちなみにカナダの住宅価格は、当然のことながら立地や広さなどによって異なるが、例えば、最も人気が高いブリティッシュコロンビア州バンクーバーで平均90万カナダドル(約7,700万円)ほど。人気中位のオンタリオ州ハミルトンでも平均48万カナダドル(約4,100万円)ほどであり、初めて住宅を購入する人の大半は、日本同様、住宅ローンを組むことになる。
ただし、住宅購入のステップは日本とかなり異なる。日本では住宅購入手続きの中に住宅ローン審査があり、購入を希望する住宅を特定してローン審査が行われるかたちが一般的であるが、カナダでは銀行の住宅ローン担当者に事前審査を申し込み、ローンを組むことができる金額を見極めた上で、購入可能な物件を探すといったスタイルが多い。ちなみにローンの最長期間は日本の35年より10年短い25年となっている。
住宅探しの中心はインターネットの住宅サイト
住宅探しの中心がインターネットの住宅サイトとなっている点は日本と同様だが、大きなスーパーマーケットなどには周辺で売り出し中の物件のチラシを置くコーナーが設置されているので、立地面を重視する人の中では、このようなチラシを利用して住宅を探す人も多い。
なお、カナダでは市による不動産の査定価格が公開されているので、これを確認することで、売り出し中の物件の販売価格が妥当であるかどうか検証することが可能である。
住宅を売り出し中の人は、売り出し中の家を自由に見ることができるオープンハウスというイベントを行うことが多い。これは週末の午後に住人が家を空けて、不動産エージェントのみが在宅し、内覧希望者が気兼ねなく家を見ることができる状況とするというもので、住宅購入希望者の大半は複数の住宅を実際に確認した上で、最も気に入った住宅を購入している。ただし、人気住宅には多くの購入希望者が集まるため、購入にこぎつけるのには希望者の中で最高額を提示することが必要となる。なお、カナダでは不動産エージェントへの手数料は売主がすべて負担するので、買主が負担するのは、家の購入金額と住宅登記やローン登録などを行う弁護士費用だけとなる。ちなみにカナダでは住宅購入に市民権や永住権は必要なく、外国人でも住宅を購入することが可能なので、転勤などで数年間滞在する外国人がローンを組んで住宅を購入して居住し、カナダを離れる際に売却していくといった例も珍しくないようだ。
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